第1部 初期のサッカー切手
4.ウルグアイのオリンピック連覇 (1928年)
第9回オリンピック・アムステルダム大会に参加したウルグアイは、オランダ、ドイツ、イタリア(準決勝)を下し、6月10日決勝戦でアルゼンチンと対戦しました。結果は引き分け(1対1)で、13日の再試合のすえ、ウルグアイが2対1で勝ちオリンピック連覇を達成しました。
同年7月29日、ウルグアイは前大会同様この連覇を記念する切手3種類(同一デザインの印刷色違い)を発行しています。木製ゴールポストと上二隅にボールが配されてはいますが、象徴的な雰囲気が漂うデザインとしか思っていませんでした。
その後調べてみますと、同国は1825年に独立を宣言しましたが、その後も独立戦争は続き、
1828年にやっと完全な独立を果たしています。オリンピック・サッカー種目連覇は、独立100周年目(独立記念日は8月27日)に達成された偉業だったことになります。
これらを考え合わせると、デザインにあるのは、独立を象徴する5月の太陽が、力を象徴するモンテビデオの丘の背後から昇っていく様子で、同国の国章(1908年制定)に由来するものと考えています。
第9回オリンピック・アムステルダム大会連続優勝記念
1928年7月29日発行(ウルグアイ)
切手の左側に1924、右側に1928、さらに下端部にはパリとアムステルダムの決勝戦が行われたスタジアム名が記され、連続優勝記念であることが強調されています。
また、今回の切手発行枚数は各10万枚で、初優勝時の各3万5000枚を大幅に上回っているのも、連覇と独立100周年という二重の喜びの表われと推察されます。
このウルグアイの連覇とアルゼンチンの健闘に力を得たジュール・リメは、『「ワールドカップ」の開催を頑固に唱え』(注1)、国際サッカー連盟(FIFA)は、1929年5月17、18日のバルセロナ総会で、第1回ワールドカップ大会をウルグアイ開催することを正式に決定しました。
注1:『ワールドカップの回想』(ジュール・リメ著 川島太郎、大空博訳、牛木素吉郎監修/ベースボール・マガジン社/1986刊)
◇「国章」のデザインについての参考文献
「世界の国旗と国章大図鑑」(苅安望編著/平凡社/2003年刊)
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