第1部 初期のサッカー切手
2.競技場面を最初に描いた切手 (1925年)
近代スポーツとしてのサッカーの競技場面を最初に描いた切手は、オリンピックとは無関係という、思わぬ形で登場します。
1925年、ハンガリーはスポーツ振興のための基金を募るための切手8種類を発行。そのうちの1種類は、サッカーの競技場面(ゴール前のシュートシーン)を描いています。 (図1)
この切手は額面価格の倍で販売され、加算された額はスポーツ振興に充てられるもので、切手の裏側にはそのことが記されました。
表面 |
裏面 |
<図1>
スポーツ振興基金切手 1925年4月25日発行 (ハンガリー) |
サッカーの他には、体操選手、スキー、飛び込み、フェンシング、ボーイスカウト、ハードルが採り上げられています。サッカー同様、各種目の最初の切手となったものも多く、スポーツ切手全体からみても貴重な8種類です。
種目ごとの額面価格や発行枚数の違いが何を語るのか、発行枚数すべてが売れた場合の基金額は? など参考までに下記に記しておきます。
種目 |
額面価格 |
発行枚数 |
体操選手 |
100 krone |
151,134 |
スキー |
200 krone |
140,669 |
スケート |
300 krone |
129,483 |
飛び込み |
400 krone |
128,666 |
フェンシング |
500 krone |
129,219 |
ボーイスカウト |
1,000 krone |
133,738 |
サッカー |
2,000 krone |
117,651 |
ハードル |
2,500 krone |
116,329 |
★売価は額面価格の2倍になる。
単位「Krone」は当時のもの。
出典:「MICHEL(ミッヘル)」(ドイツのカタログ) |
― ちょっと寄り道 ―
ハンガリー切手に記された国名は「MAGYAR ORSAZAG」です。(1919〜1937・1991年〜)度々体制の変わった同国の国名表記も変遷しましたが1874年以来「MAGYAR」の部分だけは継続使用されています。
9世紀末ごろ、中央アジアから移動してきたマジャール族に由来するものです。後年「マジック・マジャール」としてサッカー史に登場します。
ドイツの切手カタログでは「UNGARN」と表記されているので、混乱してしまう国名のひとつです。日本の切手が「Japan」でなく「Nippon」なので、外国の方が迷うのと同じことでしょう。 |
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