第３部 ワールドカップ・世界的イベントへの道（1950～1958年）
１２．第６回ワールドカップ・スウェーデン大会 （1958）④
―北の王国で、真の世界選手権大会実現―
◆「ミュンヘンの悲劇」と「伝説のプレイヤー」
スウェーデン大会を前にして、同年２月に起きた飛行機事故「ミュンヘンの悲劇」は「マンチェスター・ユナイテッド」に壊滅的な打撃を与えました。幸運にも監督マット・バスビ―とボビ―・チャールトンを含む９選手が生き残りましたが、同チーム再建には長年の歳月を要しました。
イングランド代表チームは、この大会のヨーロッパ地域予選グループ１で４試合を戦い得点15、失点５を記録し、楽々と本大会出場を決めていました。その中心なって活躍していた３人の選手、ダンカン・エドワーズ（MF）、ロジャー・バーン（DF）、トミー・テイラー（FW）をこの事故で失い代表チームを再編成せざるを得なくなりました。
特にダンカン・エドワーズ Duncan Edwards（1936～1958）は、15歳で「マンチェスター・ユナイテッド」に入り、18歳でイングランド代表に選ばれ、代表出場18試合を数えていました。21歳で事故に遭遇、負傷後15日間の入院加療もむなしく亡くなりました。
左足からの強烈なシュートを放つ若手として将来を期待されていたひとりでした。1996年第10回ヨーロッパ選手権イングランド開催を記念してイギリス郵政は彼を含む５名の「伝説のプレイヤー」（故人対象）を選出し、記念切手を発行しました。
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左足でシュートを放つダンカン・
エドワーズ
「伝説のプレイヤーたち」
1996年ヨーロッパ選手権開催記念
マキシマムカード
（1996年5月14日発行・イギリス） |
注）「伝説のプレイヤー」（ダンカン・エドワーズ以外は次のとおり）
・ディキシー・ディーン WilliamRalph (Dixie)Deen（1907～1980）
・ビリー・ライト William Ambrose (Billy) Wright （1924～1994）
・ダニー・ブランチフラワー
Robert Dennis(Danny) Branchflower（1926～1993）
・ボビ―・ムーア Robert Frederick (Bobby) Moore（1941～1993）
◆アイルランド期待の若手選手も
「ミュンヘンの悲劇」にはアイルランド出身のプレイヤーも含まれていました。リアム・ウェラン Liam Whelan （1935～1958）です。「マンチェスター・ユナイテッド」のユースチームへ招かれ、1955年にトップチームに昇格し、ボビ―・チャールトンとポジション争いをするほどのプレイヤーに育っていました。母国アイルランド代表として３試合の経歴は、ダンカン同様アイルランド期待の若手だったといえましょう。
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「ミュンヘン航空機事故50周年」
オールド・トラッフォードスタジアムの
止まった時計も描かれている。
（2008年2月4日発行・アイルランド） |
＜切手の国名表示＞
アイルランド ＜EIRE エール＞
アイルランドの切手上の表示はゲ―ル語のEIREです。由来はグレート・ブリテン島に住んでいたケルト民族のブリトン人がその西側の島のケルト系ゲ―ル人を「西に住む人」をErin(エリン)と呼び、やがてEIRE（エール）に変わったとのことです。なお、アイルランドは、12世紀にアングロサクソンの支配下となり、ケルト語の英語化が行われました。エールは英語読みのアイル（Ire）となり、これにlandを加えた Ireland (アイルランド)となったものです。
（この項の参考文献：「地名の世界地図」21世紀研究会編・文春文庫） 1922年英連邦内の「アイルランド自由国」となりましたが、1937年カトリック教徒が多い南部が独立し、国名を「エール」に改めました。1949年に英連邦から離脱して完全独立を果たし、国名も「アイルランド」にもどしました。
（切手のEIRE表示の歴史は古く1922年に遡ります）
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