第4部 ブラジル、ジュール・リメ杯永久保持へ(1962〜1970年)
12.第9回ワールドカップ・メキシコ大会 (1970) C
― 世界のスーパースターの競演 ―
◆準決勝の死闘を制したイタリア
1968年、イタリアはサッカー協会創設70周年を記念し、自国で開催された「ヨーロッパ選手権」の覇者となりました。その勢いで翌年のワールドカップ予選を戦い抜き、本大会に進出、1次リーグ3試合を、わずか得点1、失点0で突破しました。1950年大会から1966年大会(1958年大会は地域予選敗退)まで、4大会1次リーグ敗退という長い暗闇から抜け出すことに成功しました。1969年1月にメキシコへ遠征、メキシコ代表と2試合を行い、高地での攻め急がない戦い方を学んだと言われます。
準々決勝では、ジャンニ・リヴェーラの活躍により、地元メキシコに4対1と攻撃力を発揮した勝利でした。
準決勝、イタリア対西ドイツ。8分に先制したのはイタリアでしたが、以降西ドイツのベッケンバウアーを中心とした反撃を、GKアルベルトージが必死に防ぐという展開でした。試合終了直前、最後の攻撃に出た西ドイツ・グラボウスキーが左からのクロスを送り、攻め上がってきたディフェンダーのシュネリンガーがあざやかにゴールを決め、試合は延長戦に突入しました。
西ドイツにとっては、準々決勝のイングランド戦に続く延長戦でした。加えて65分には攻め上がったベッケンバウアーがペナルティエリア付近で相手ディフェンダーと接触し転倒、右肩を負傷しバンデージで固定してプレイを続けていました。
延長戦に入ってから試合は激しさを増します。延長前半4分にミューラーが得点し、西ドイツがリードしますが同8分にはイタリアが2対2の同点に追い付きます。さらにリーヴァが切れ味鋭くペナルティエリアに侵入、強烈なシュートを決めてイタリアが3対2とリードし、延長前半を終えます。
延長後半5分、西ドイツは最後の気力を振り絞って得たコーナーキックをゼーラーが頭で折り返し、飛び込んだミューラーがまたも頭で得点し、再度同点に追い付きます。しかしそのわずか1分後、ボニンセーニャが左サイドから折り返したボールをジャン二・リヴェラが決め、4対3で激戦を制し、イタリアが3度目の決勝進出を果たしました。
ミューラーはこの大会10得点を記録し、メキシコ大会得点王に輝きました。
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メキシコ大会記念切手展カバー
(西ドイツチーム集合写真入り・切手展記念消印/
1970年6月21日付 ・西ドイツ) |
◆ブラジルも決勝進出
準決勝のブラジル対ウルガウアイは、1950年第4回ブラジル大会以来となる、ワールドカップ本大会での対戦でした。そして勝った方が、ジュール・リメ杯永久保持へ王手をかけることが出来る一戦でもありました。先制したのはウルグアイでしたが、前半終了直前に追いついたブラジルが、後半に2得点を追加し、3対1で勝利し決勝進出を果たしました。
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大会記念初日カバー
メキシコ国旗を背景にプレイするウルグアイ代表
(1970年6月2日発行・ウルグアイ) |
◆リメ杯永久保持に価するブラジルの「完璧な勝利」
これまでのワールドカップで、イタリアとブラジルはともに2度の優勝を飾っており、勝利した方がジュール・リメ優勝杯を永久保持する決勝戦でした。
17分にペレがリベリーノからのロビングをヘディングで決めてブラジルが先制。しかし、37分に相手パスをカットしたボニンセーニャがそのまま独走し、飛び出したGKフェリックスをかわしてシュートを決め、イタリアが前半で同点に持ち込みました。
しかしながら、後半に入るとブラジルがすさまじい勢いで攻め立て、イタリアの守備陣をふりまわし、66分(ジェルソン)、71分(ジャイルジーニョ)、86分(カルロス・アルベルト)と得点を積み重ね、4対1の「完璧な勝利」でジュール・リメ杯永久保持を成し遂げました。
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ブラジル代表集合写真(記念ハガキ)
(1970年・西ドイツ製)
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宛名面に記載された
選手名 |
―ちょっと寄り道―
「攻撃的な左サイドバック、 ファケッティ(イタリア)」
イタリアのジャチント・ファケッティ(Giacinto Facchetti)はキャプテンとしてこの大会6試合全てに出場し、準優勝に大きく貢献しました。守備的な戦術「カテナチオ」を誇るイタリアの左サイドバックですが、189pながら俊足を活かした攻め上がりからのカウンター攻撃を得意とし、通算得点は60点に達しました。
1950年から20年間の「世界のベスト・イレブン」を描いた12種類の切手については、3−5「第5回ワールドカップ・スイス大会 A」でも触れていますが、ファケッティも当時の「世界最高のレフト・バック」として選出されています。なおこの大会に出場した、ペレ、ボビ―・チャールトン、ベッケンバウアーも「ベスト・イレブン」に選ばれています。
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「世界のベスト・イレブン」に
選ばれたファケッティ選手
(1970年5月11日発行・
ニカラグア) |
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