6月26日(月)
カメラマンの戦い
イタリア 1対0 オーストラリア (カイザースラウテルン)
★富越正秀さんの話
フランクフルト中央駅で、カメラマンの富越正秀さんにばったり会った。カイザースラウテルン行きの列車まで時間があったので、駅の「DBラウンジ」で話を聞いた。
今回はフィールドで撮影できるカメラマンの数が、きびしく制限されていて、グループリーグの段階でも取材許可の出ない試合が多いという。フィールドに降りて、ラインぎわで撮影できるカメラマンは
150人、スタンド上に設けられた場所から撮影できる者は45人で、それ以外はメディア・パスを持っていても、試合を見ることさえできない。
試合ごとに取材登録の申請をするが、優先順位がある。ラウンド16の試合になってからは、日本のカメラマンは、ごく少数しか認められないという。ウェイティング・リストに載せてもらい当日、競技場に行って空きができたら認めてもらえることもある。以前から行われている方法だが、今回はとくにきびしくなり、あらかじめ組織員会から「ウェイティングでも認めないから、競技場に来ないように」とメールであらかじめ断ってくるそうだ。それでも出かけると、たまたま空きが出て入れることがあるから、ムダ足になることを承知で行ってみる。その手間と心労でほかの取材も、ほとんどできない。
富越さんは、この日は取材許可もないし、仕事の整理もしたいので、休養日にしたということだった。
★優先順位の決め方
カメラマン用のメディア・パスの日本への割り当ては40枚だった。ところが、そのほかにも、いろいろな名目で登録している者がいて、日本人カメラマンが
100人以上いるという。問題は制限の方法である。
まず、国際通信社が最優先である。AP、ロイター、AFPなどである。今回は、このなかに日本の共同通信社が入っている。次に、その試合に出場している2つのチームの国と開催国ドイツのメディアが優先される。こういうように原則が決まっている。日本が敗退したあと、日本への割り当てが激減したのは当然である。
各国のなかでの割り振りは、国によって事情が違う。その国のサッカー協会の意見が基礎になるだろう。日本の場合は時事通信社、FIFAの協力メディアの日本経済新聞、発行部数の多い全国紙の順位が高く、フリーランスは立ち場がきびしいだろうと想像した。
富越さんは1974年の西ドイツ大会から、取材を続けているフリーランスである。国際的に活躍し、すぐれた作品を多く生み出している。著作もある。今回も複数の有力メディアに写真を提供している。ヨーロッパでは、こういう専門のフリーランスへの優先順位は高い。こういう人が撮影できないのは、サッカー界の損失である。メディア制限の方法は、FIFAとしても、日本サッカー協会としても考え直す必要がある。
★ヒディンク監督の存在感
日本の第1戦のときは、同じカイザースラウテルンの会場で猛烈な暑さだったが、この日は気温23度、湿度57%。暑くはなかった。
オーストラリアは、優勝候補のイタリアを最後まで苦しめた。前線と中盤の両翼の選手を大きく広げて配置し、イタリアの選手が分散するように仕向けていた。イタリアは、2〜3人のコンビで短いパスをすばやくつなぎながら攻めあがるのが得意である。イタリアの選手同士の間隔を広げさせ、コンビによる逆襲速攻がしにくいように狙ったのではないかと想像した。立ち上がりから高いボールを大きくあげてイタリアに圧力をかけてイタリアを受け身にさせ、そのうえでドリブルによる攻め込みもまじえた。
後半開始5分にイタリアのマテラッティが退場になった。そのとき、オーストラリアの選手2人が、水を飲むためにベンチ側のタッチラインへ行き、そこへヒディンク監督が出てなにごとか指示を与えていた。ヒディンク監督はベンチでどっしりと構えているかと思えば、要所要所で立ち上がって戦況を見ている。ポイントを押さえた指示をしているようすがうかがえた。監督の存在感はきわだっている。
イタリアが10人になったあとは、イタリアが守りの形勢。0対0のまま延長寸前だったが、後半の追加時間(4分)に入ってから、イタリアがPKを得て辛勝した。
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