6月12日(月)
日本の敗因を考える
オーストラリア 3対1 日本 (カイザースラウテルン)
チェコ 3対0 米国 (ゲルゼンキルヘン)
イタリア 2対0 ガーナ (ハノーバー)
★午後3時のキックオフ
朝の「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙にボブ・ヒューズ記者が「太陽が沈むとともに試合の質が上がる」と書いていた。これまでのところ、午後3時からの試合は暑さのために内容がよくない、午後6時、午後9時とキックオフの時間が遅くなるにつれて、いい試合になる、という趣旨である。
日本のワールドカップ初戦、オーストラリアとの試合は午後3時キックオフ。暑さの影響をまともに受けた。
雲ひとつない快晴で、真夏のようなかんかん照りである。ピッチ上の気温は35度くらいにはなっていただろう。
日本の前半は、非常によかった。ひとりひとりの体調はよさそうだったし、気合も入っていた。中村俊輔を軸にパスの組み立てのコンビネーションはスムーズに回転していた。初戦にあわせた調整の仕上がりは、完全なように見えた。
前半1対0とリードして、有利な展開である。
ところが、後半はがらりとようすが変わった。原因は暑さである。
★歴史に残る? 大逆転負け
後半は選手の足が、ぱったり止まった。まず柳沢、中田ヒデ、ついで俊輔である。前半に暑さのなかで動いて攻めを組み立てた影響が出たのだろう。それでもパスを組み立てて攻めようとしたが、パスを出したあと、鋭くは走れない。
オーストラリアのほうも、ばてていた。パスの受け手が走ってくれないから、ボールをとった選手は、やむなくドリブルで突破しようとする。それを、疲労の色の濃い日本の守りが迎えうつ。個人対個人の争いの場面が多くなって、日本に不利な展開になった。
それでも、守りの中心の宮本のカバーリングとGK川口の再三の好セービングで、リードを守り続けていたのだが、最後の5分あまりに一挙に崩れて3点を取られ、大逆転の敗北になった。
宿舎のペンションのマスターが「最後の5分間に3失点とはね。フットボールでは、いろんなことが起きるんだよ」と慰めてくれた。
この試合は、劇的な大逆転劇の一つとしてワールドカップの歴史に残るかもしれない。
★オーストラリアとの3つの違い
同じ暑さが、なぜ日本に大きく影響し、オーストラリアに有利に働いたのだろうか? いろいろあるだろけど三つだけ考えてみた。
第一は体力差である。体格がよく、筋肉の太いオストラリア選手のほうが、エネルギーをたくさん蓄えているからスタミナが続くのではないか。車体が大きいだけでなく燃料タンクも大きいのではないか?
第二に、戦法、戦術の違いである。日本は、よく動いて組織的に攻守を組み立てる。そのために、脳の中でもエネルギーをたくさん使う。そのエネルギーが燃え尽きると一挙に集中力が切れる。オーストラリアは、日本にくらべると、攻め方が単純で個人の体格や技術に頼る面が大きい。そのためエネルギーの消費量が少ない。
第三は両監督の交代策である。オーストラリアの3点をあげた2人はともに後半に交代出場した選手だった。疲れていない新戦力にボールを集めて打開を図った。
日本は後半35分に柳沢に代えて小野を入れ、2点とられたあと、ほとんど残り時間のない時点で大黒を投入した。
ヒディンク監督のほうは暑さの影響を考えて動き、ジーコ監督は戦術的交代をしたのだと思う。それが明暗を分けた。
|