6月20日(火)
ドイツのサッカーの底力
ドイツ 3対0 エクアドル (ベルリン)
★仕上がってきたドイツ
ベルリンへドイツ対エクアドルの試合を見に行った。6月20日、グループリーグの最終戦である。両チームとも、ベスト16進出は、すでに決まっている。それでも、地元の大衆はゴールのたびに熱狂していた。
ドイツ代表チームは試合ごとに仕上がってきている。チームとしてまとまり、守備は組織的で、安定してきている。気迫あふれるきびしい攻守である。つまり、もともとのドイツ・サッカーの底力が戻ってきている。
第1戦は、太ももの故障で大事をとった主将のバラックが、第2戦に続いて、この日も先発、フル出場した。前半は、攻撃の起点になるパスを、主としてフリンクスが出したが、フリンクスのできはよくない。状況判断が遅く、パスが不正確である。バラックがいないと、攻めを組み立てられそうにないところが、ドイツの弱点ではないかと思った。
★サッカー文化の奥深さ
ぼくが本拠地にしているフランクフルトを午前8時過ぎに出た。列車で片道4時間、正午過ぎにベルリンに着く。試合開始までに時間があったので、駅前近くの「アディダス・フットボール・ワールド」とパブリック・ビューイング会場の「ファン・フェスタ」を見た。全国一だと自慢していたフランクフルト以上の規模である。
「アディダス・フットボール・ワールド」のなかに、庶民のアパートの模型のようなものが作ってあった。ベランダにドイツの旗が出ている。おかみさんの人形が外を見ている。表ではおやじさんと子どもがサッカーを見ている。そういう想定の作りである。場内にミニ・サッカー場が、いくつも作ってあって、ここでは人形でなく、若者や子どもたちがゲームを楽しんでいる。ワールドクラスのプロのサッカーが、大衆の生活に結びついているものだという考えが、こういう商業宣伝の施設にも出ていて興味深かった。
★明石真和さんの著書
こういう、奥の深いドイツのサッカー文化の背景をしるために、ぜひ読んでもらいたい本がある。「ビバ!サッカー研究会」仲間の明石真和さんが書いた「栄光のドイツサッカー物語」である。
明石さんは、駿河台大学教授でドイツ文学とドイツ語の先生である。そしてサッカー狂である。ドイツの文献を原書で読みこなす。「キッカー」などドイツの新聞も定期購読している。さらに毎年ドイツに出かけ、ネッツアーやベッケンバウアーなどに直接話をきいている。表面だけのブンデス・リーガの知識を振り回したり、数年のドイツ留学の経験にものをいわせているのとは、ものが違う。だから著書の「栄光のドイツサッカー物語」は、最近のサッカーの出版にはあまりない、奥の深い本である。
ドイツに来ている日本のサポーターのなかに、釜本、杉山を知らない若者がいることに、ぼくは驚いている。一方、ドイツの子どもたちは、みな1954年のワールドカップで優勝したドイツの主将、フリッツ・ヴァルターを知っている。そこにサッカー文化の厚みの違いが表われている。明石さんの本を読んで、そんなことを考えながら、フランクフルトに着いたのは、午前3時だった。
|