第8部 女子サッカー、戦後再出発から女子世界大会まで
13.ロンドン五輪・女子サッカー競技 (2012)
◆地域予選・本大会出場国
国名後の数字はオリンピック出場回数。
ヨーロッパ(3) |
イギリス(1) (開催国)
(英国オリンピック委員会・BOAは、2011年6月21日初めての
「イギリス統一・女子サッカーチーム」編成を発表)
<2011女子ワールドカップ 上位2チーム>
スウェーデン(5)
フランス(1)
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南米(2) |
<2010スダ・メリカーノ・フェミニーノ 1、2位>
ブラジル(5)
コロンビア(1)
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北中米・
カリブ海(2) |
<北中米カリブ海予選 1、2位>
USA(5)
カナダ(2) |
アジア(2) |
<アジア予選 1、2位>
日本(4)
北朝鮮(2)
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アフリカ(2) |
<アフリカ予選>
南アフリカ(1)
カメルーン(1)
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◇日本・アジア予選の足跡
日本が世界の頂点に立った2011年7月17日から僅か44日しか経っていない9月1日から11日まで、「ロンドン・オリンピック女子アジア最終予選」が、中国で集中開催されました。しかも、11日間に5試合と過酷な日程で、日本を含む6チームがわずか2つのアジアの出場枠を争いました。
第1戦タイを3対0(川澄奈穂美、田中明日菜、オウンゴール)。第2戦韓国を2対1(阪口夢穂、大野忍)(韓国:チ・ソヨン)。第3戦豪州を1対0(川澄)。第4戦北朝鮮と1対1(オウンゴール)(北朝鮮:キム・チョラン)。第5戦中国を1対0(田中)。
最終成績5戦4勝1分け、1位で4大会連続オリンピック出場。
◆本大会 (2012年7月25日〜8月5日)
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開催記念・サッカー
(2012年7月27日発行・
イギリス) |
◇ 1次グループリーグ組分けと結果
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1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
E |
イギリス |
ブラジル |
ニュージーランド |
カメルーン |
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スウェーデン |
日本 |
カナダ |
南アフリカ |
G |
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◆日本・グループリーグの戦績
第1戦:対カナダ1対1(33分 川澄奈穂美、44分 宮間あや)
第2戦:対スウェーデン 0対0
第3戦:対南アフリカ 0対0
◆決勝トーナメント
◇準々決勝 (4試合全て8月3日開催)
@フランス対スウェーデン 2対1
<グラスゴー/ハムデン・パーク 12,869人>
得点者:フランス/28分 ジョルジュ、38分 ルナール
スウェーデン/17分 ニッラ・フィッシェル
AUSA対ニュージーランド 2対0
<ニューカッスル/
セント・ジェームス・パーク 10,441人>
得点者:USA/27分アビー・ワンバック、
87分シドニー・ルルー
B日本対ブラジル 2対0
<カーディフ/ミレニアム・スタジアム 28,528人>
ブラジルの、マルタやクリスチアーニを軸とする迫力ある攻めの前に、日本は立ち上がりから防戦一方でした。27分、左サイドで得たフリーキックを澤穂希が素早く蹴り、パスを受けた大儀見優季(旧姓永里。ロンドン・オリンピック代表選出を機に登録名を変更)がドリブルで相手DFを振り切り、右足で先制のゴールを決めました。
その後もブラジルの猛攻は続きましたが、熊谷紗希、岩清水梓、鮫島彩、近賀ゆかりのDF陣ががっちりと受け止め、相手にゴールを許しませんでした。
73分の大野の追加点は、自陣左サイドから鮫島の蹴った縦パスから始まりました。このパスを受けた大儀見が左足でクロスを走り出していた大野の前に送り、これを左足でシュート、ボールは左上のバーに当たりゴール内に落ちました。敗れたブラジルは1996年アトランタ・オリンピック以来、初めてベスト4に残れませんでした。
Cカナダ対イギリス 2対0
<コベントリー/コベントリー・スタジアム 28,828人>
得点者:カナダ/12分ジュネーュ・フィリーニョ、
26分クリスティン・シンクレア
◇準決勝 (2試合とも8月6日開催)
@日本対フランス 2対1
<ロンドン/ウェンブリー・スタジアム 61,482人>
シュート数4対27と圧倒された試合でしたが、32分ハーフライン手前からの宮間のFKをGKブアディがキャッチミス、こぼれたボールを大儀見が倒れ込みながら押し込み、先制しました。 49分の追加点の起点になったのも宮間のFKでした。フリーで抜け出した阪口が頭でゴール右隅に決めました。
フランスの攻勢は止むことなく、76分ルメソールにゴールを許し、直後の79分には日本の右サイドを突破され、PKを与えてしまいました。幸いにもエリーゼ・ブサグリアの蹴ったボールはポストの右を外れ、日本が逃げ切りました。
AUSA対カナダ 延長4対3
<マンチェスター/オールド・トラフォード 26,630人>
得点者:USA/ 54分、70分ミーガン・ラピノー、
80分アビー・ワンバック(PK)、
120+3分アレックス・モーガン
カナダ/28分、67分、73分クリスティン・シンクレア
カナダのシンクレアにハットトリックを許し、3度のリードを奪われながら3度追い付いたUSAは、延長後半にモーガンが頭で合わせ、劇的な逆転勝利をもぎ取りました。
◇3位決定戦 カナダ対フランス 1対0
<8月9日13:00〜
コベントリー/コベントリー・スタジアム 12,465人>
得点者:カナダ/90+3分 ダイアナ・マシソン
◇決勝 USA対日本 2対1
<8月9日19:45〜
ロンドン/ウェンブリー・スタジアム? 80,203人>
開始8分、アレックス・モーガンの左からのクロスにアビー・ワンバックが左足を振り抜く寸前、飛び込んできたMFカーリ・ロイドが頭で合わせ先制を許しました。54分、再びロイドに左からドリブルで突き進まれ、ペナルティエリアの外から右足ミドルシュートを放たれ、追加点を奪われました。
63分、宮間、大野、澤へと渡ったボールを、大儀見へパス。これを大儀見が押し込んで追撃に勢いをつけました。パスワークと速攻を交えた攻撃でUSAを追い詰めましたが、GKソロの攻守の前に同点に追い付くことは出来ず、敗れました。
日本は金メダルに届きませんでしたが、明らかにUSAを脅かす存在にまで成長した姿を見せてくれた試合でした。
◇本邦初・女子サッカー選手記念消印
ロンドン・オリンピックからおよそ2カ月後、切手展「かごしまスタンプショー2012」が開催され、記念する消印が用いられました。なでしこの活躍を思わせる本格的な女子サッカー選手を描いたのは、前夷真由美さんという方です。自作カバー(消印部分)を掲げておきます。
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スタンプショー開催記念消印
(2012年10月13日付
・鹿児島東局) |
第8部のまとめ
◆女子サッカー世界大会の推移
女子サッカーの趨勢と、世界へ挑戦する日本女子サッカーの足跡をご理解いただけるよう、女子ワールドカップとオリンピックの2つの世界大会を、年代順にリストアップしました。
1991年 |
第1回 FIFA女子世界選手権 |
<中国> |
参加12 |
@USA Aノルウェー Bスウェーデン Cドイツ |
日本:グループリーグ 3敗 (得点:0、失点:12) |
1995年 |
第2回 FIFA女子世界選手権 |
<スウェーデン> |
参加12 |
@ノルウェー Aドイツ BUSA C中国 |
日本:ベスト8 1勝3敗 (得点:2、失点:8) |
1996年 |
アトランタ・オリンピック |
<USA> |
参加8 |
@USA A中国 Bノルウェー Cブラジル |
日本:ベスト8 1勝3敗 (得点:2、失点:8) |
1999年 |
第3回 FIFA女子世界選手権 |
<USA> |
参加16 |
@USA A中国 Bブラジル Cノルウェー |
日本:グループリーグ 1分2敗 (得点1、失点10) |
2000年 |
シドニー・オリンピック |
<オーストラリア> |
参加8 |
@ノルウェー AUSA Bドイツ Cブラジル |
日本: 1999FIFA女子選手権7位以内を逸し、参加出来ず。 |
2003年 |
第4回 FIFA女子ワールド杯 |
<USA> |
参加16 |
@ドイツ Aスウェーデン BUSA Cカナダ |
日本: グループリーグ 1勝2敗 (得点:7、失点6) |
2004年 |
アテネ・オリンピック |
<ギリシャ> |
参加10 |
@USA Aブラジル Bドイツ Cスウェーデン |
日本:ベスト8 1勝2敗 (得点2、失点3) |
2007年 |
第5回 FIFA女子ワールド杯 |
<中国> |
参加16 |
@ドイツ Aブラジル BUSA Cノルウェー |
日本:グループリーグ 1勝1分1敗(得点3、失点4) |
2008年 |
北京オリンピック |
<オーストラリア> |
参加12 |
@USA Aブラジル Bドイツ C日本 |
日本:4位 2勝1分3敗 (得点11、失点10) |
2011年 |
第6回 FIFA女子ワールド杯 |
<ドイツ> |
参加16 |
@日本 AUSA Bスウェーデン Cフランス |
日本:世界一 4勝1分1敗 (得点12、失点6) |
2012年 |
ロンドン・オリンピック |
<イギリス> |
参加12 |
@USA A日本 Bカナダ Cフランス |
日本:銀メダル 3勝2分1敗 (得点7、失点4) |
2015年 |
第7回 FIFA女子ワールド杯 |
<カナダ> |
参加24 |
2016年 |
リオデジャネイロ・オリンピック |
<ブラジル> |
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◆FIFA女子ワールドカップの賞金
2007年の第5回「FIFA女子ワールドカップ」(中国大会)から、本大会参加チームに下記賞金が成績に応じ支給されはじめ、2011年大会から一部改定されました。
(男子の賞金額の推移については第7部11のまとめを参照)
成 績 2007年賞金額 2011年賞金額
優 勝 US$1,000,000.- 同左
準 優 勝 US$ 800,000.- 同左
3 位 US$? 650,000.- 同左
4 位 US$ 550,000.- 同左
ベスト 8 US$ 300,000.- US$ 350,000.-
グループリーグ敗退 US$ 200,000.- US$ 250,000.-
◇補足
第8部では、女子サッカーの全体像把握のため、試合データ等をできるだけ多く記しました。その分煩雑になりましたが、事情ご理解ください。
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「手のひらの上のサッカー史」に対するご意見・ご感想は、 こちらから。 |