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サッカーマガジン 1967年2月号

アジア一の実力を示した日本

アジア大会総まくり  (3/4)  

2次リーグ

12月15日(木)
▽A組
シンガポール 2(0−0、2−0)0 タイ
▽B組
インドネシア 2(0−2、2−0)2 ビルマ

 後半なかばに襲った目のくらむような豪雨の間に、シンガポールは2点をあげて劣勢の試合をものにした。
 地元タイにはこの敗戦が大きなショックであった。準決勝進出の希望がうすくなったからである。
 前日の南ベトナムに対する大勝といい、この日の勝ちっぷりといい、まことにふしぎなチームで、シンガポールの進出は、今大会の奇妙な台風の眼である。
 ビルマは正確なパスを駆使して優勢だったが、後半守りを固めようとしたところを、インドネシアの積極的な反撃につかれて引分けた。
 危い橋を渡るビルマの戦いぶりである。

12月16日(金)
▽A組
日本 5(4−1、1−0)1 シンガポール
▽B組
イラン 1(1−0、0−0)0 インドネシア

 八重樫は、まだ出られない。しかし試合は一方的に日本のもので、前日タイに勝っているシンガポールは、引分けをねらって守りを固めたが、日本は激しい動きで攻め崩し、前半釜本、宮本輝、渡辺が3点を先取、シンガポールに1点返されたあと、杉山が1点を加え、後半の終りごろに釜本が追加点した。
 日本チームは、これで4連勝。はじめのころ、どうも動きのもの足りなかった釜本が、鋭いシュートをするようになったのが収穫。
 「この調子なら金メダルだ」
 とコーチ陣も、再び明るさを取り戻した。
 イランは前半フリー・キックで1点をあげて勝つ。大量点はあげないけれど、安定感が増してきた。地元の新聞は、いまや「優勝を争うのは日本とイランだ」と書いている。

12月17日(土)
▽A組
日本 5(2−1、3−0)1 タイ
▽B組
ビルマ 1(1−0、0−0)0 イラン

 日本は3万の観衆の中で地元夕イに快勝して5連勝、参加11チームの中でただひとつ無敗で準決勝に進出した。日本は勢いに乗った感じであり、若い選手たちは希望に燃えていた。
 計算上は、この試合は日本が負けてもよい試合だったのである。日本は0−5以上の大差で負けない限り、準決勝進出を失うことはなかったのだし、また単なる仮定の話をすれば、0−5くらいでわざとタイに勝ちをゆずって、2次リーグA組で2位になっておけば、準決勝ではB組1位のビルマと当ることになり、かえって日本にとって有利だったかも知れないのである。岡野コーチは、この日の試合のあとで、「イランとは決勝であたりたかった」といっている。日本にとっては、体格のよいイランより、ビルマのほうがやりやすい相手だったように思われる。
 そうはいっても、もちろん、わざと負けるようなことはスポーツマン・シップに反するし、相手もあるのだから、現実にできることではない。
 ただ、メンバーを大幅に入れかえて、小城あたりを完全に休ませる手はあったのだが、コーチ陣は、杉山と宮本輝を休ませるに止めた。もともと力の差は紙一重なのだから、少し手を抜くと大敗する危険は十分ある。また、せっかくの意気ごみを、自らくじくおそれもある。コーチ陣はそこを考えたのかも知れなかった。
 結果はタイに完勝だった。開始後2分に桑原が先取点をあげ、あと釜本と松本が1点ずつ、桑原が2点を追加した。
 しかし、この2日続きの大勝が、かえって選手たちを疲れさせたのかも知れなかった。
 イランはビルマに1点差の負け。予想に反してビルマが、イランを上まわるスピードある攻守をみせた。しかし、イランはすでに準決勝進出が決まっており、ビルマはインドネシアと引分けているため、絶対に負けられない立ち場だったこともある。

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