1次リーグ
12月10日(土)
▽A組
タイ 3(0−0、3−0)0 韓国
▽B組
日本 2(0−0、2−1)1 インド
イラン 2(1−0、1−0)1 マレーシア
▽C組
インドネシア 3(1−0、2−0)0 シンガポール
2会場に分れて4試合。第1試合の途中に豪雨があった。乾季のバンコクでは珍しく、12月に入ってはじめての雨である。
日本は、第1戦に前回優勝の強敵インドに逆転勝ちした。この日の立役者は、宮本輝紀。後半4分インドが先取点した歓声が消えないうちに、正面から得意のコントロールのよいシュートで同点、続いて8分には杉山−釜本と渡ったボールを受けてヘディングで逆転。「ヨーロッパに遠征して勉強しただけのことはある。日本は賢明で構成力のあるサッカーをした」と外電は伝えている。
地元では、日本の勝利を“番狂わせ”としている向きもあった。この日勝った4チームはいずれも上位のチーム力がある。ただ韓国の大敗は、いささかふがいない。
12月11日(日)
▽B組
日本 3(0−1、3−0)1 イラン
▽C組
インドネシア 0(0−0、0−0)0 南ベトナム
日本は2日連続して強敵に逆転勝ちした。イランは、胸板の厚い、がっしりした選手をそろえ、大きくボールをまわしてヨーロッパふうの攻め方をする。
前半37分イランがシルザデガン選手のたくみな足わざで、守備をかわして先取点したが、日本は後半フリー・キックからチャンスをつかみ、4分釜本、29分杉山の得点でリード、40分に小城のPKでダメ押しした。
ファウルの多い、荒っぽい試合で、双方にかなりの負傷者が出た。八重樫が後半35分に左ヒザをけられて上と交代したが、ジン帯を伸ばしてしまって、このあとの試合出場がむつかしくなった。これが、のちに準決勝でイランと再び当るとき、大きな痛手になろうとは、このときはまだ分るはずもない。
試合のあと、観衆がスタンドから飛びおりて騒ぐトラブルがあったが、これはタイ国人の審判に、イラン選手が「判定が不公平だ」と抗議したところから、観衆が噴激して起きたものだという。日本選手は「関係ない」と、さっさと退場した。
12月12日(月)
▽A組
ビルマ 1(0−0、1−0)0 韓国
▽B組
インド 2(0−1、2−0)1 マレーシア
▽C組
南ベトナム 2(1−1、1−0)1 台湾
あとになって振り返ってみると、金メダルを得たビルマが、1次リーグで苦戦のすえに勝ち上ってきていることに、びっくりする。
第1戦でタイに完敗している韓国と激しい攻め合いを演じたすえ、終了間ぎわに、ハン・セイン選手の独走シュートで、からくも勝っているのだ。参加チーム全部の力が、紙一重の差であることが分る。韓国は2敗で失格が決まった。
台湾は、香港サッカー協会が香港在住中国人選手の出場を禁止したため、一時棄権を伝えられたが、この日午後、香港からの選手13人をふくむチームがバンコク入り。すべり込みで南ベトナムと対戦した。メンバーの中には、11月に来日して日本代表と対戦した香港選抜の郭錦洪選手もふくまれている。
ここでちょっと説明しておきたいのは、香港に住んでいる中国人選手が、台湾(中国)の代表選手で出るのは“不正”ではないということだ。一部の報道に「台湾が香港の選手を借りる」と書いていたが、これは適切な表現ではない。
日本に住んでいる韓国人が、韓国代表になる(卓球やホッケーで例がある)のと同じことなのである。ひとりの選手が、香港を代表したり台湾を代表したりするわけではない。香港の住民の大部分が中国人で、香港代表として出る住民もいるだけに、不自然ではあるが、不正ではない。誤解している人が多いので、ちょっと付け加えておきたい。
12月13日(火)
▽B組
イラン 4(2−1、2−0)1 インド
▽C組
シンガポール 3(3−1、0−2)3 台湾
インドが敗れたため、B組から日本とイランの2次リーグ進出が決まった。イランは激しいタックルと力強い攻撃で、PKによるインドの先取点をはね返した。日本に1敗しているけれども、優勝をねらう恐るべき相手だということが誰の目にも明らかになった。
シンガポールは、3−0のリードから台湾に追いつかれて引分け。このチームがベスト4に残ろうとは、この時点では考えられなかった。
日本は2日続けて試合がなく、ゆっくり休養というところだが、暑さは休んでくれないから、それほど体力は回復しない。対イラン戦で6人が負傷し、とくに八重樫は心配だ。
12月14日(水)
▽A組
ビルマ 1(0−1、1−0)1 タイ
▽B組
日本 1(1−0、0−0)0」 マレーシア
▽C組
インドネシア 3(0−1、3−0)1 台湾
シンガポール 5(4−0、1−0)0 南ベトナム
この日で1次リーグ終了。2次リーグ進出に関係のあるのは、C組の2試合のみ。
日本は前半28分釜本のあざやかなヘディングで、超満員の観衆をうならせたが、得点はこの1点だけ。すでに2次リーグ進出が決定しているし、負けそうにない相手でもあったが、プレーに気力がなく、動きがにぶかった。
八重樫の欠場で中盤に小城と宮本輝を使ったが、小城に生彩がなく、後半宮本征勝と代った。思えば、このときすでに、日本チーム、ことに中盤をささえる労働量の多い選手に、疲労のかげが濃かったのである。
シンガポールは、劇的な大勝で南ベトナムを降し、ともに1勝1敗1引分けとなり、ゴール・ディファレンス(得点と失点の差)で2次リーグに出た。南ベトナムを抜くには3点以上の差をつけなければならないところ、5−0にしたのである。実力互角だし、南ベトナムは守りを固めればよいはずなのに、こんなケースが起きるのがふしぎだ。東南アジアのサッカー特有の気まぐれなところか。
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