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サッカーマガジン 1970年1月号

新春対談
篠島秀雄(三菱化成社長)副会長にきく
―クラーマーの爆弾提案について―
ききて・牛木素吉郎            (3/3)   

日本蹴球協会の組織改革

■協会組織の改革
 以上のようなことを、やっていくのに、現在の協会の組織が、ふさわしくない、と思っている人がいるのに、改善されない、ということは確かにあるだろう。
 ぼくは、昔から協会の理事長などをやらされてね。忙しいから、なかなか出ていかれないんだが、こまかいことは、こっちでやるから、というので引き受けておった。会社の社長になるとき、とても社長とは両立しないから、というんで、理事長はやめさせてもらったんだが……。
 むかしは、理事会を開くといっても、通知状が来たことがない。どうしても、ぼくが必要な重要な問題があるときには、ぼくの都合に合わせて、会議を開いてくれ、といってあったが、そういうことも、あまりなかった。
 いまは、副会長ということで、名前を残してくれてるが、近ごろは、理事会開催の通知が、ちゃんと、くるようになったからそういう点だけでも、前よりは改善されたのではないか、と思っていたんだが……。 

■若手役員の起用
 手のつけられる範囲のことから、まず、やっていかなくては、ならないが、ぼくは組織を作るときでも、まず、人を中心に考える。
 コーチをやれる人がいる、国際部長をやれる人がいる、そういう人物を使うのに、どういう組織が、いいかということだな。
 いま協会にいる古い人たちの経験知識も、使わなければならない点がある。ただ、こういう人たちは、えてして変化をきらうんだな。自分たちが、むかしからやっていることが、みな間違いないことだと思いこんでいる。そこを謙虚にかえりみるだけの頭脳のフレキシビリティ(柔軟性)は、衰えている。
 そこで、新しいエネルギーを加え、行動力を持つ人を起用しなければならない。若い人たちの力を発揮できるようにすればいい。いい人間は、どんどん利用できるようにすればいい。若手の部長に仕事をさせるようにするんだな。
 それが、なかなか、うまくいかないんだろうが、古いのを追っ払って、若い人でやるというのではなしに、たとえば、常務理事をどんどん増やしたらどうだ。規約をみると若干名と書いてある。100人だって、若干名といえば若干名だ。ある時期においては、若い人と年寄りが、たくさんいる理事会が、できるかも知れないな。理事が多くなったらお金がかかるというかも知れないが、月給払うわけじゃないんだから……。会議のときにカレーライスを食わせるくらいの金は、近ごろはあるようだ。
 新しいのも、古いのも、それぞれ特徴を生かしていければ、いちばんいい。
 年寄りが、名誉職をうれしがって、やってる楽しみを奪うことはない。
 しかし、やるべきことは、やらなくてはいかんから、組織の意思決定をする部分へ若手を組み込まなければ、いけないな。 

■中央と地方と学校
 協会の事務局でも、若手で有能なペイド・セクレタリー(有給事務局長)が必要だという。優秀な人で、来てくれる人は、なかなかいないだろうが……。
 岡野俊一郎君は、うちの商売があるから、そういつまでも、サッカーばかりはやれない。だから事務局長はダメだといっていた。ぼくは、長沼健君はどうだ、といったんだが、まだうまくいってないようだね。
 事務局には、事務処理の能力のあること、経理が分かること、国際的な応答ができるやつが必要だな。
 それから、組織の問題では、地方と中央との関係をうまくやっていくこと。中学・高校の体育関係者――中体連、高体連の組織とうまく、結びつけていくことが必要だ。
 とにかく、なんとかしなければ、ならないということは、クラーマーもいっとったし、よく分かっている。やれることからでも、まず、やらなけりゃならない。
 だけど、最初にいったことだけど、これはサッカーが国家・国民の役に立つから、やるんでね。これがベースだから、ここんとこを、ちゃんと書いといてくれよ。ただの趣味でやっとると思われたら困るからな。

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