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サッカーマガジン 1966年6月号

ワールド・カップ予想  (3/3)     

イングランドへの期待
 第二に、地元イングランドの、この大会にかける期待はどうか。
 ことしのワールド・カップは、イングランドのサッカー協会(FA)の創立100年記念事業の1つとして誘致したものである。
 いまは“世界のスポーツ”になったサッカーの、発生の国としての誇りが、この大会にかけられている。
 これまで、ワールド・カップでのイングランドの成績は、サッカーの母国にしては、芳ばしいものではない。
 第4回大会では、サッカーに関しては未開発国のアメリカに敗れて、大きなショックを受けている。
 第5回大会では、準々決勝でウルグァイに負け、第6回大会はソ連に再試合のすえ敗れ、準々決勝にも進出できず、前回の第7回は準々決勝でブラジルに敗れた。
 この不成績は、ヨーロッパ大陸の各国が、南アメリカ風の技巧のサッカーも取り入れ、個人技とチーム・プレーをミックスした戦術で進歩していたのに対し、古いスタイルのサッカーを続けていたためだといわれた。
 このため、前回の大会のあと、17年間イングランドを指導していたウインターボトム・コーチが辞任し、ラムゼー・コーチが国民の期待をになって登場した。
 ラムゼー・コーチは、ヨーロッパ風のスタイルを取り入れて、最近の国際試合で好成績を残している。
 ラムゼー改革により、組合せにも恵まれたことであり、イングランドがブラジルと決勝を争うものと期待されている。

世界をリードするサッカーは……
 第三に、ヨーロッパ風と南米風のサッカーのどちらが、将来の世界をリードするようになるのか。それを決めるのが、ことしのワールド・カップなのだ。
 南米のサッカーは、個人の曲芸のような足わざが、むかしからの特徴だった。ブラジルは58年の大会のとき、この華麗な足わざを、糸であやつるようなチーム・ワークに結びつけた4・2・4システムを完成した。
 ヨーロッパのスタイルは、正確なショート・パスが特徴である。そしてヨーロッパでも4・2・4の布陣が採用されているが、攻撃の足わざの進歩に対抗して、深く守備を固める傾向が強い。
 「ヨーロッパの連中の試合ときたら、0−0の引分けばかりじゃないか。ブラジルの、点をとるサッカーのおもしろさをみせてやりたいものだ」
 ブラジルのフェオラ・コーチのいい分である。
 第3組での、ハンガリー、ポルトガル、ブルガリアとの対戦が、もっとも激戦であると同時に、南米対欧州の対決を象徴するものとして、人気を集めることになるだろう。

サッカー試合の賭け
 イングランドには公認の賭け屋(ブッキー)がいて、サッカー試合に対する賭けが、国民の大きな楽しみになっている。
 ワールド・カップに対する賭けも、話題の1つなので、最後に各チームの、優勝に対する賭け率を紹介しよう。
 ブッキーによる賭けは、日本ではなじみがないので、簡単にやり方を紹介すると、あなたが、ブラジルが優勝すると思った場合、ブッキーに賭け率を聞く。
 ブラジル優勝の賭け率が9対4のときは、あなたがブッキーに400円を支払えば、ブラジルが優勝したとき、900円もどってくる仕組みである。
 賭け率は、株の相場のようなもので、大会が近づくにつれて、変動する。ペレが負傷した、というような情報が入れば、ブラジルの率がよくなるわけだ。
 下記のは、2月13日当時のもの。
 北朝鮮は1月、組み合わせ発表のころは、500対1――100円に対し5万円の配当だった。これはイギリスと北朝鮮に国交がなく、チームが参加できないというようなウワサがあったためだ。
 国際サッカー連盟会長のサー・スタンレー・ラウスが、
 「北朝鮮は、バカにできない力がある」
 と談話を出すようなこともあって、最近では150対1くらいまで下っているという。
 北朝鮮は昨年夏平壌のアジア新興国大会(共産国系の大会)でも優勝しており、アジア最強の実力は確実。
 同じアジアの国民として、ただ一つアジアから出ている、北朝鮮がどのていど戦えるかも、注目したいところである。 (了)

優勝に対する賭け率(2月13日)
ブラジル 9対4  
イングランド 5対1  
アルゼンチン 7対1  
イタリア8対1  
ソ連 9対1  
ポルトガル 14対1  
ハンガリー 22対1  
フランス 25対1  
スペイン 25対1  
西ドイツ 25対1  
チリ 40対1  
ウルグアイ 40対1 
ブルガリア 66対1  
メキシコ 100対1  
スイス 100対1  
北朝鮮 150対1 

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