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ビバ!サッカー研究会・ワールドカップ座談会
サポーターズアイ 「私たち、ぼくたちのワールドカップ」

【 グループ A 】
2006年8月25日 @渋谷・ウィメンズプラザ
牛木素吉郎(司会)、栗山 裕司、近藤 詩月、山内 純子、山田 晃、藤田 直樹

<その2>

☆ジーコへの評価

◆自主性か育成か

牛木 ジーコ監督のチームの作り方や用兵についての意見は?
 
栗山 ジーコは選手の自主性を尊重するという方針だったようですが、日本のサッカーのいまのレベルでは、代表チームの中で選手を育成することも必要ではないでしょうか。
 
牛木 選手はクラブで育ってきて、できあがった選手の中から代表選手を選ぶのが、欧州や南米では当たり前の方法ですね。だけど日本では、各クラブで国際レベルの選手を生み出せないということでしょうかね。

藤田さん
「ジーコのやり方・戦術は
間違っていない」という藤田さん

藤田 ぼくは、ジーコのやり方や戦術は間違っていないと思いました。日本のサッカーのために、選手を育成したいのか、現在の選手で勝つ方法を探るのか。どちらの方針をとるかの問題だと思います。1対1の勝負をしないのか、1対1で勝てるようにするのか。どちらをとるかですね。ぼくたちが、むかし学校でサッカーをしていたころは、1対1の勝負を避けて、チームとしてプレーするように指導されました。でも、それでよいのか、個人で勝負をさせてみてはどうかと思うこともあります。ジーコは、個人で勝負できなければ、国際舞台では通用しないと考えたのだと思います。

◆選手の選び方

牛木 代表選手の選び方は、どうですか?
 
藤田 あのメンバーが、いまの日本のベストと言っていいでしょう。あの顔ぶれで負けたのは仕方がないと思います。結果論でなく、問題はなぜ負けたか? モチベーション、コンディション、1対1をどうするのか。そういった議論が必要です。
 
山内 ジーコは、信じている選手を呼んで、4年間、結果も出していた。アジアカップで優勝したし、ワールドカップの出場権もとった。チームとして育てるよりも、選手頼みのイメージが強いけれど、それまで役に立っていた選手を、本番のワールドカップでも呼ぶというチョイスは正しいと思います。ただし、私の考えでは、日本人はチームの中の関係性で力を発揮できる人が多いのではないか。個人としては代表に呼ぶにふさわしい選手が選ばれていたが、チームとして機能できる人選では、なかったかもしれない。個人の集合ではなく、チームとして、+αをもたらしてくれる監督であってほしかったと思います。

山田 ジーコはメンバーを固定してのぞんだけど、選手を起用するうえでコンディションをみていなかったのではないか。例えば本大会前3ヵ月骨折で休んでいた柳沢を先発で起用し続けたとか,リーグ戦に満足に出ていない,コンディションの上がらない高原を起用し続けたとか。オーストラリア戦では、相手が後半攻撃の選手を出すのはわかっていたはずだが、そのための対策が見えなかった。フィールドの選手には、あの選手を交代で出してほしいというような考えがあったのではないか。それがジーコに伝わっていたのだろうか。交代で小野を出したけど、小野の動きは中途半端だったように見えました。
 
山内 オーストラリア戦は、1点とったところまではいけると思っていました。同点にされたあと、ハーフタイムに気持ちを入れ替える必要があったと思う。でも、そのような言葉をかける監督とは思えない。

近藤 ジーコは大会前に「日本は強い、勝てる」と言っていたけど……。勝てるだけのものを持っていたのでしょうか。
 
牛木 監督は試合の前には「勝てる」と言うほかはないものですよ。ボクシングの試合で、明らかにポイントで劣っていても、セコンドはコーナーに戻ってきた選手に「勝っている。勝てる」と言って励ますものだそうです。


☆大会全体の印象

◆意外なことのない大会

牛木 ワールドカップの競技全体については、どう思いましたか?

山内 意外なことがない大会だったと思います。順当な勝負が多かった。

栗山 驚きやワクワク感は少なかったね。でも、国の特徴が生きているチーム、変わったチームもあった。たとえば、トリニダード・トバゴの選手とサポーターは印象的でした。

近藤 アフリカ勢の進出を見たかったけど、最後は欧州と南米だけになっちゃった。アジアとアフリカにもっと頑張って欲しかった。でも、アフリカは今後が楽しみだと思います。

牛木 その点では、2002年の日韓大会が変な大会だったんですよね。優勝候補が早々と負けたり、韓国と日本が勝ち進んだり……。

山田 2002年はチャレンジカップだった。新興勢力が欧州、南米の既成勢力に挑戦した大会でした。今回の2006年は、実力世界一を争うワールドカップになりました。

◆守備的な試合が多かった

牛木 試合の内容はどうでしたか?
 
藤田 かたい大会でしたね。どのチームも戦い方が堅実で冒険はしない。だから驚きが少なかったのだと思います。

山田 決勝トーナメント以降は、1点をとりにいくよりも、1点とられないようにするような試合展開が多かった。守備的な大会だったのが残念です。
 これは,ベスト16に強豪国ばかりが残ったこと、欧州チャンピオンズ・リーグや国内リーグの過密日程で、疲れが抜けなかったことなどが原因と思われる。また、監督の采配で試合が決まるケースも多かった。例えばドイツ対アルゼンチンのリケルメ交代など……。
 
藤田 フランスが、守備的なスタイルのイタリアのような試合をしていました。ぱっと見たら区別がつかないくらい似ていた。
 
牛木 守備的な試合が多かったのは、オフサイドのとり方が変わったのも影響したのではないかと思います。オフサイドのポジションにいても、その選手が直接、ボールにプレーしなければ、オフサイドをとらない。それで、オフサイドの場所にいる選手が、相手の守備の注意を引き付けておいて、後方から飛び出した別の選手がパスを受けてプレーするというような攻めがあった。それを警戒すると、はじめから引き気味に守ることになる。もともと攻撃的な試合を増やすためにFIFAは判定基準を変更したのだけれど、逆に守備的な試合を増やしてしまったように思います。
    
藤田 日程がハードなことも影響しているのではないでしょうか? 欧州の各国リーグが終わってからでは、代表チームとしての練習期間が十分にはとれないし、このままでは、ワールドカップの質は悪くなるのではないかと心配です。
 それに、使用球が変わったことも影響していると思います。今回、新たに使われたボールは、今までのものよりもさらに変わって、誰が蹴っても、どこにあたっても飛ぶというクセのあるものになりました。カーブをかけられなくて、まっすぐ飛ぶ。テクニックのある選手に向いていない。そのために、南米のチームは苦労していたと思いました。

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