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ビバ!サッカー研究会 公開シンポジウム
なでしこ!しなやかに、つよく
〜女子サッカーの現在と未来を語る〜 
【3】

初戦:ニュージーランド戦について

砂坂美紀
砂坂美紀さん(スポーツライター)

砂坂  まず初戦のニュージーランド(以後NZ)ですが、北京五輪であたった時はドロー。初戦なかなか入りづらいのがなでしこですが、きっちりやれば勝てるかなと思います。Bグループの中では実力的には一番下だとは思いますが、オセアニア予選は5試合で50得点0失点。

江橋  準決勝と決勝のハイライトはyoutubeで見ましたが、GKがいてもいなくてもいっしょという感じでした。オセアニアのレベルはそんなもんなんですよ。とはいえ、北京五輪の時は捨て身のプレスで、なでしこが面食らったところがあった。

四方  私もNZとは一度親善試合で対戦しましたが、すごく強いという印象はありませんでした。ですがもし、そういう印象で入ってしまってギャップがあったときには、難しいゲームになるかも知れません。

江橋  初戦なので入り方が重要だとよく言われるが、僕は、入り方ってどうすればよくなるのかが、今イチ分かりません。

中地  いい入り方をするというのは、とても難しいことだと思います。選手だけでミーティングをしたり、チームとしてもミーティングをして、試合に向けて気持ちを高めていくことが大切だと思います。

江橋  元フリューゲルスの選手で、現在はなでしこリーグ伊賀FCの監督である大嶽直人さんの話を引用します。伊賀FCの選手は試合への入り方がうまくないそうです。フワーッと試合に入っちゃうそうなんです。大嶽さんの感覚であれば、男子ならばこういう入り方はしないと思うそうです。そのため、フワーッという、何となく試合に入ってしまうのは、女性特有なのか? それともうちのチームだけの問題なのか? と悩むそうです。
原因として考えられるのは、相手の強さ、うまさ、評判などをリスペクトし過ぎるからなのではないか、とのことでした。何故か相手に呼吸を合わせてしまったり、気後れしたりする部分があるそうです。その点、お二人がいた頃のベレーザはどうでしたか?問題なさそうだったと思いますが。

四方  最初のプレーを大事にし過ぎると、硬くなってしまうかも。アテネ五輪・最終予選の北朝鮮戦で、澤選手が相手の選手とバチーン!とあたってボールを奪った。ああいうプレーを出せるのがベストです。あの試合はあのプレーで決まったんじゃないかと思えるぐらいです。

江橋  それは皆さん言われますね。開始1分で澤さんが相手選手にショルダーチャージをして、相手がシリモチをついた。これで今日は勝ったとみんな思ったそうです。そういうプレーを出せることが、いい入り方なんですね。

中地  そういうプレーを目の前で見れば、自分も続かなくてはいけない、続きたいと思いますし。

江橋  北京五輪のロッカールームで澤さんが言った、「苦しくなったら、私の背中を見て」という言葉も、仲間を奮い立たせる名言でしたよね。

第2戦:メキシコ戦について

江橋  第2戦のメキシコなのですが、中地さんは2003年にメキシコに行かれてますね。

中地  ピッチに立つことは出来ませんでしたが、あのアウェイの雰囲気は凄かったです。アステカスタジアムに10万人の観客が集まりました。ピッチから見ると、巨大なかたまりのようで、まるで人じゃないみたいでした…。そういう環境では選手同士の声がは聞こえないですし、標高2000m以上の高地なので、ちょっと動いただけで息が切れる。それでも、自分達のサッカーをこんなにも多くの人が見に来てくれているんだと、幸せな気持ちになりました。

江橋  それはタフですね。女子代表の逞しいところですね。

砂坂  去年ドイツで行われたU-20大会のメキシコ代表から7名が選出されています。メキシコはこの大会でベスト8に進んでいます。以前と比べて一人一人の技術が上がっているような感じでした。

江橋  あとGKが天才的だと言われています、正GKも控えも。控えは16歳。北米予選ではアメリカに勝っています。

四方  親善試合では日本が勝っていますが、それは当てにならないと思いますね。

第3戦:イングランド戦について

江橋  第3戦はイングランドですが、地区予選は7勝1分けの成績。また2009年の女子ユーロでは決勝まで進んでいる。その決勝でドイツ相手に2−6で敗戦。ですが、負けたといえイングランドは強いですね。中心選手はケリー・スミスですが、どういう印象を持っていますか。

四方  上手いと思います。派手さはないのですが、基本的技術がしっかりしているという印象です。

江橋  止める・蹴るの技術に加えて、止めてから蹴るまでの“速さ”を持っている選手。エンドライン際をえぐって、中を向いて2人かわしてドリブルして、ペナのところからクロスを上げてきたり、角度のないところからシュートを打ってきたりする。左から仕掛けてくることが多いです。

砂坂  2007年W杯で日本が対戦した時も、そういうシュートを打たれ失点してしまった。その時ケリー・スミスから2点取られて結果は2−2で引き分けでした。

江橋  あとボランチのスコットは180cm。ポール・スコールズのようにシンプルにはたいて上がってくるので怖い。あと両ウィングが足が速いです。

砂坂  両ウィングは注目です、左ウィングはヤンキーという選手です。ちなみにケリー・スミスは今年で32歳です。

江橋  彼女達は4年前も出場しています。しかし4年分衰えているのか、それとも成熟しているのかは分からないです。やはりイングランドはセットプレーとパワープレーが怖いですね。このグループを1位抜けする条件として3戦全勝が理想。少なくともイングランドに絶対勝たないといけない。2位抜けすると決勝トーナメント1回戦でドイツとあたってしまうので、おそらくそこで敗退してしまうでしょうから、上位進出を目指すならば1位抜けが絶対条件。ですからグループ3戦を通じて、最低でも勝ち点7が欲しいです。

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