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サッカーマガジン 1990年3月号

いま充実!
ワールドカップを迎える
カルチョ・イタ〜リア!!           (2/2)    

イタリア・サッカーリーグ会長
ルチアーノ・ニッツォーラ氏


リーグの成功の理由はバランスの良さ

 ――イタリアのワールドカップを成功させるためには、地元のイタリア代表チームの活躍が大きなカギになると思います。代表選手の母体であるリーグの会長として、どうお考えですか。

ニッツォーラ(以下も敬省略) もちろん、私たちは、イタリア代表の選手たちに対して責任があります。彼らがワールドカップにいい状態で出られるようにするために、今シーズンはイタリア選手権(リーグ)とイタリア・カップを、例年より早く、4月末日までに終えることになっています。そのために1週間に2試合のスケジュールも組みました。シーズン中は、ナショナルチームの試合があり、リーグがあり、イタリア・カップの試合があり、また7チームが欧州の3つのクラブカップに出ていたので、その試合もあります。選手たちにとっては苦しい日程で、ケガや疲労の問題がありますが、これはある程度は止むを得ないと思います。しかしシーズンが終われば、ワールドカップの準備に専念できます。5月の1カ月間をいかに有効に使うかが重要でしょう。この間にケガを治し、疲れをとって、いい状態に持っていってもらいたいと思っています。

 ――優勝の可能性はどうですか。

ニッツォーラ イタリアは、ベスト4にははいると思います。決勝に出られれば幸福ですね。優勝したら、もちろん言うことはありません。技術的には、イタリアは優勝できる力を十分持っていると思いますが、ワールドカップは、長い期間にわたる大会ですから、その間に、どんなことが起こるか分かりません。だから必ず優勝するとは言えませんが、可能性は高いと信じています。

 ――イタリア・リーグは、世界でもっとも成功しているリーグですね。観客が多く、騒動などの問題が少ない。レベルが高くて、若いすぐれた選手が育ってきている。その秘密はなんでしょうか。

ニッツォーラ イタリア・リーグはバランスがとれています。それが成功している理由です。第1に、セリエA(1部)18チームの粒が揃っていて、1、2のチームだけが飛び抜けて強く、いつも優勝するということがない。だから、どのカードも面白い。第2に、イタリアには、世界でもっともすぐれたスーパースターが集まっている。だから試合のレベルが高い。いま欧州でもっともレベルの高いリーグだと思います。第3に観客動員に成功している。したがって新聞やテレビの関心が高く、テレビの放映権収入も大きい。このような要素が、お互いにかみあって、わたしたちのリーグを成功させています。

 ――観客が熱心でしかもお行儀がいいのにはびっくりします。

ニッツォーラ イタリア人は、本当にサッカーが好きで試合そのものを楽しんでいます。また、わたしたちも、お客さんにサッカーを楽しんでもらうように努力しているんです。たとえば、イタリアの各チームのスタジアムは、きれいで設備がいい。ワールドカップのための改修で、さらに良くなりました。お客さんたちは落ち着いて試合を楽しむことが出来ます。

外人選手によりイタリア人も技術向上

 ――スタジアムを良く出来るのも、人気があって収入があるからですね。イタリア・リーグは、欧州でいちばんのお金持ちだときいていますが……。

ニッツォーラ サッカーはイタリアで、9番めか10番めの産業だと思いますよ。各チームの収入は、本来は入場料が主ですが、最近はテレビの放映権利金も多くなりました。この3年間は年間600億リラでした。この契約は、今シーズンで切れますが、来シーズンからは金額はもっと上がることになるでしょう。このテレビマネーは、半分はセリエA(1部)18チームで分け、残り半分はセリエB(2部)の20チームが分けます。リーグには残りません。

 ――イタリア・リーグはテレビの生中継をしないときいていますが……。

ニッツォーラ なるべく多くのお客さんにスタジアムに来てもらうために、試合の同時中継は認めていません。それでもサッカーは人気があるから、録画でもみな見るし、サッカーを素材にしたテレビの番組をいろいろ作ることが出来るのです。そのためはRAI(イタリア国営テレビ)が、権利金を払ってくれます。

 ――トトカルチョの収入は?

ニッツォーラ これは、世間が考えているほど、多くはありません。トトカルチョは、わたしたちのリーグの試合を対象にしたスポーツくじですが、その売り上げは当選者と政府とCONIが3分の1ずつとります。CONIは、それを、いろいろなスポーツ団体に分配します。サッカーへの分配は5.5%で、そのうちリーグへの配分は2.5%だけです。昨年リーグが受け取ったのは550億リラでテレビ収入を下回っていました。

 ――クラブがスポンサーをつけるのがイタリアでは多いようですが……。

ニッツォーラ 広告スポンサーは、各クラブが、それぞれ直接交渉します。胸に広告を付けたり、競技場に看板広告を出したりするものです。メーンスポンサーが、1年間に15億リラくらい出しているのではないでしょうか。

 ――収入が多いから、外国のスター選手も集まるわけですね。

ニッツォーラ いま外人選手はセリエAは1クラブ3人までです。EC(欧州協同体)のメンバーなので、EC域内では労働の自由化の問題があって、外人選手制限は難しいことになってきつつあります。1992年にはECが完全に統合されるので、外人制限は困難になるでしょう。それに、クラブが選手のトレードマネーを取れなくなる可能性もあります。選手たちはいまよりも自由にチームを移れるようになるかも知れません。

 ――南米の選手がたくさん来ている一方で、イタリアの若い選手も伸びていますね。

ニッツォーラ 外人選手が来るから、地元選手の活躍の場がなくなって、国内のレベルが下がるようなことは考えられません。かえって、いろいろなサッカーがはいってくることが刺激になって、イタリアの選手の技術も向上しています。ともあれ、ワールドカップのあと、欧州のサッカー界が変わってもイタリアのサッカーは、まだまだ伸びると思いますよ。

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