朝鮮民主主義人民共和国から来日した「ピョンヤン（平壌）４．２５クラブ」サッカー代表団は、大阪、神戸、東京で４試合をして全勝、その独特の速攻の威力を存分に披露した。「“アジアの稲妻”と呼ばれた朝鮮のサッカーの秘密は何かを日朝の指導陣に語り合ってもらおう」と企画したのが、この座談会。「サッカーマガジンには、昨年来日したピョンヤン高等軽工業学校チームのコーチたちの座談会も載っていましたね。ピョンヤンでも評判でした」と「４．２５」の監督、コーチは快く出席して下さった。
＜主席者＞
リ・チャンソン監督
ピョンヤン４．２５クラブ団長
リ・ハンボク責任指導員
ピョンヤン４．２５クラブ責任指導員、朝鮮民主主義人民共和国代表チーム監督、1964年東京オリンピック代表選手
パク・ドイク指導員
ピョンヤン４．２５クラブ指導員、1966年ワールドカップ代表選手
岡野俊一郎
日本蹴球協会理事、技術委員
長沼健
日本蹴球協会理事、技術委員長
司会 牛木素吉郎（読売新聞運動部）
通訳 李昌碩（在朝鮮蹴球団団長）
有意義だった交流
牛木 朝鮮民主主義人民共和国から「ピョンヤン（平壌）４.２５クラブ」のチームを迎えて、改めて朝鮮のサッカーの強さにびっくりして、1966年のワールドカップで優勝候補のイタリアを破り、準々決勝の立ち上がり24分で強豪ポルトガルから３点をリードした、あの強さは本物だったんだ、ということを痛感させられているんですが、きょうは、「４.２５」の指導陣と日本のサッカーの指導陣とじっくり話し合っていただいて、朝鮮のサッカーの強さの秘密をさぐりたいと思うわけです。また長沼、岡野両氏は、日本のサッカーの将来をになう、協会の比較的若い幹部ですから、この機会に率直な意見をお互いに交換することが、日朝のサッカーの交流の将来のために有益ではないかと思います。その点でもお話をしていただきたいものです。
リ・チャンソン監督 ピョンヤン４.２５クラブ・サッカー代表団は日本サッカー協会と日朝スポーツ交流協会のお招きで日本に来ました。目的は朝・日の体育人の親善と技術交流に役立ちたいということだったわけですが、この二つの目的は達成されたのではないかと思います。
岡野 率直に申し上げて、私は、スポーツと政治とは別だと考えています。日本とチョソン（朝鮮）は、これだけ近くに位置しているのだから、政治的な交流はなくても、スポーツの交流のチャンスが持てれば素晴らしいと思って日朝のサッカーの相互交流に踏み切ったわけですが、サッカーの技術的な面で日本が学ぶところは大きかったのは、もちろんですが、いろんな面で交流を深めていくために極めて有意義でしたね。
長沼 私の感想は主として技術的なことになるわけですけれども、朝鮮民主主義人民共和国のサッカーについて私どもも、ある程度の予備知識は持っていたわけですね。日本のチームは1966年のワールドカップのときに、ロンドンに試合を見に行っていて、朝鮮チームの試合ぶりをテレビで見たんですが、そのときの印象は、走る量が多い、スピードがあるということだった。ところが今回、ピョンヤン４.２５チームを迎えてみて、テクニックの素早さという点で非常にきわだっていることに驚きました。やはり朝鮮のサッカーの良さ、強さは、実際に試合をしてみないと分からない。今回は日本へ来ていただいたので今度は日本から出かける番ですが、トップ・クラス同士のチームの交流を経験するのは非常にいいという印象ですね。
リ・ハンボク責任指導員 われわれは、正直にいって日本のサッカーについては、あまり知識は持っていませんでした。ヨーロッパや東南アジアの国とはこれまで交流があったのに、日本は地理的には、もっとも近い国だけれども交流がなかったからです。今回日本に来て試合をしてみて日本のサッカーの水準を知ることが出来たわけですが、日本の選手はなかなかすぐれている。ことにボール・コントロールはいい。タッチの柔らかさがすぐれていて学ぶべきものがあると感じました。
牛木 パク・ドイク・コーチは1966年のワールドカップでは、イタリアとの試合に決勝点をあげて以来、日本でも有名ですが、これまでに外国には何度くらい出かけていますか。
パク・ドイク指導員 海外には20回以上出ていますが、主としてヨーロッパと東南アジアです。日本のサッカーについては、メキシコ・オリンピックで３位になったことを知っていた程度で具体的なことは知りませんでした。
リ・ハンボク責任指導員 私は1964年の東京オリンピックのときに、選手として日本に来て、日本チームとユーゴ・チームの練習試合を40分間くらい見た。
パク・ドイク指導員 日本の選手はボール・コントロールがいい。局部戦術もよい。ただ攻撃に威力がないと思いました。
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