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サッカーマガジン 1966年12月号

【座談会】
アジア大会に日本はいかに戦うか
 (2/4)    

強敵はどこか

牛木 日本の強敵ということになってくるとどうだろう。

岡野 まあこの間のムルデカにきたチームには全部勝てるでしょう。順当にいけば。だからむしろこなかったチームですね、間題は。まずくるかこないかこれはほんとにわからないけど、イスラエルね。イラン、それからインドネシアもちょっとこわい。未知数だし。ぼくの見たチームでいいと思うのはインド、それと韓国。

牛木 イスラエルは、いまのところはこないという情報ですね。

高橋 インドネシアはまあ、そんなに伸びてないんじゃないかという気がするけど。インドあたりのほうがこわいだろう。

浅見 速さを持ってるからね。

岡野 それと韓国のやはり、日本に対する一つの対抗意識というか、激しさというもの。で、さっきのコンプレックスじゃないけど、まだ日本は勝ってないんだよ。そういった意味で、これは話がちょっと飛ぶけど、大学で韓国チームを呼んだときには、選手はもっと真剣にやってほしい。ああいうゲームでも韓国の選手は、同じ年代の連中が日本に負けたことがないという、その自信が大きいものね。

牛木 まあ延世大学とか、高麗大学とか日本にくるけど、日本のほうは非常にいいかげんに扱って、負けてもいいようなつもりでやって帰すというのはよくないね。

浅見 それでユースが勝ってないでしょう。そのユース育ちがだいぶ向こうにいるし。

岡野 日本には勝ってみせるという気があるんだから、向こうには。そういう点がサッカーは重要だと思うんだよ。

高橋 タイは内弁慶だからね、あそこもこわいよ、タイでやったら。

岡野 とにかくタイというのは、自分の国でやったら強い。観衆も熱狂するし。

高橋 何しろマレーシアなんか、タイでやったら、絶対負けるという自信を持っている。(笑)

牛木 今度ベトナムが優勝したんだけどね。あんな戦争しているところがひょこひょこ出てきて勝つなんて……。(笑) ぼくらの常識からいったらだいたいおかしいな。

浅見 サッカーは戦争に関係ないからね。

岡野 あそこはバイガングというドイツのコーチね、ユースできた。あれがナショナル・チームでずっと見てたけど、やっぱりいいこといってたよ。選手もよく信頼してるしね。

牛木 まあアジア全体のレベルとしても、20年前、15年前から比べると、日本も非常に上がってるけど、アジアも上がってるんじゃないかね。

高橋 だいぶ上がってるでしょう。

牛木 インドネシアにユーゴのコーチが入った。それからビルマにはハンガリーのコーチが入ったし。

岡野 フィリピンでも、英国からコーチを呼ぶんだって。

高橋 パキスタンにも英国からきてる。

岡野 みんな呼んでるよ。

浅見 それからいいチームを呼んで、いい試合を見るということでかなりやってるしね。

牛木 そういう点で東南アジアのチームも、必ずしもあなどりがたいんじゃないかと思うんだけど。

岡野 それはやっぱり、一つの国におけるサッカーの密度という点からいったら、まだ日本は問題にならない。タイ、マレーシア、香港、インドヘ行こうと、あるいはビルマヘ行こうと、どこの国だって最高のスポーツですよ、サッカーが。


アジア大会の主役はサッカー

牛木 第1回のアジア大会がマニラであって、あのときに水泳の田畑さんが会長で行って帰ってきたとき、今度のアジア大会のメーン・エベントは球技だといったんだね。それはサッカーのことなんだ。フィリピンというのはバスケット・ボールのほうが盛んな国なんだけど、それでもそういう感じだったんだ。そうするとアジア大会のメーン・エベントはやっぱり、水泳でも陸上でもなくて、サッカーでしょうね。ムルデカとちがって、向こうも本番になったら違うぞと思ってるから、アジア大会で優勝するということはなかなか、ファンが期待したりするほどは容易なことじゃない。やっぱり相当の覚悟もいるし、幸運もいるしということじゃないか。

浅見 けっきょく、紙一重だね。サッカーにおいては。東南アジアは、とうてい馬鹿にできない。

岡野 だからほかの種目は幸せだというんだ。(笑) ほかの種目だったら日本が世界の水準に達してなくても、東南アジアなら勝てるじゃない。ところがサッカーに限ってはむずかしいんだ。

牛木 だからアジア大会、極東大会を含めて長い歴史の中で、日本のサッカーが決定的にナンバーワンであったという時代はなかった。

高橋 うん、いままではね。

牛木 だからもし今度優勝できれば、これはやはり日本のスポーツ史上において、画期的なことだと思う。

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