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高橋祐幸のブラジル便り・目次
 

高橋祐幸(たかはし ゆうこう)

ブラジル・サンパウロ在住。1933年岩手県生まれ。1960年にブラジルにわたり、日本商社の現地法人(三菱商事)に35年間勤務。退職後ボランティアでトヨタカップ南米代表実行委員を15年間務め、川崎フロンターレ、大宮アルディージャのブラジル代表顧問を約8年間務めた。県立盛岡中学(旧制)で、八重樫茂生(メキシコ五輪銅メダル日本代表キャプテン)と同級生だったことがサッカーに携わる機縁ともなって、日本にもブラジルにも広いサッカーの人脈を持つに至った。


 

 


遺稿4
日本とブラジルのお役所の違い (2014/11/28)

◆日本の災害を思いやる
  選挙当日。どうせ身体中が痛くて眠れないのだから、日曜日(10月5日)の深夜は、開票結果がテレビで次々に流れるのを見ていた。
  大統領選は、ジルマとネーベスがやはり決選投票に進むことになったので「もしやの」期待が出て明け方やっと、うとうとした。
  サンパウロ州知事では、当選して欲しかったスカッフ候補は敗れてしまった。

  私のこの度の突然の激しい苦痛と衰弱は、日ごろの行いの悪い私にふりかかった災害だが、最近の本邦にふりかかる災害は、何故日本だけをこうも苛めるのだろうと神様に抗議したいくらいである。
  広島市を襲った台風の豪雨で発生した土砂崩れも、御嶽山の噴火でも多くの死亡者を出したようだ。津波、台風、地震、竜巻など、日本では、戦後最悪と云う災害があとを絶たないように見受ける。余り気象変化のない地球の裏側で、のほほんと生きてきた私は、なんとも申し訳ないような気持ちである。

◆ブラジルのお役所の対応
  私の家の前の歩道に高さ10メートル程の大きな樹がある。根が歩道を持ち上げて、根元から2メートルくらいまでの幹にはクッピンと呼ばれる白蟻が空洞をつくり、すっかり土台が弱っているので、夏場の激しい落雷とスコールがくれば、いつ倒れてもおかしくない状態である。
  市役所に毎年、その樹を斬って別の若木に植え替えて貰いたいと申請し続けてきたが、市役所は、樹の伐採は条例で固く禁止されているので如何なる理由があろうとも申請を受け付けることは出来ないと頑固一徹である。
  ブラジルの家屋税は道路に面した長さ(メートル)で算出して課すので、12メートル間口の我が家の家屋税は、かなりの高額である。
  「もしこの樹が倒れて向こう三軒、両隣りの家も含めて損害が発生したら 市役所が補償して呉れるのか」と言ったら「自然災害は市役所の責任ではないので補償はしない」と、多額の税金を払っている市民をバカにした呆れるばかりの態度である。
  大木がわが家の前にあるだけに、倒れて近所の家までに損害が発生した場合 みな我が家に補償を求めてくることは明らかで、樹一本が我が家を倒産に追い込むことになるのも時間の問題かと思われる。

◆日本は優しい国
  そういう国に比べて、日本は、なんと優しい国だろうか?
  日本政府、地方自冶体、国民はこぞって災害救援・支援・復興に力を尽くしてくれる。こんな国・国民が世界にあるだろうか。
  それでも、日本では、高台移転の新しい街造り計画にスピード感がないとか、被爆地の汚染除去が進まないために「ふるさと帰り」ができないとか、まるで丸ごと政府の責任であり怠慢であるかのように政府を批判する声がマスコミに出ているらしい。
  復興担当大臣を設け、災害対策に膨大な国家予算を注ぎこんでくれる国の鼻薬をブラジルの政治家に飲ましてやりたいといつも思う。
  北朝鮮の拉致家族の問題についても、日本政府はいろいろ努力しているようにブラジルに住んでいる身からは見える。
  私も引き裂かれた家族たちの心情に同情してはいたが「もう待てない」「時間がない」「政府はもっと強腰を」など政府の対応を訴える報道をみると、政府の方が気の毒に思える。
  相手が相手であり、駆け引きが必要であり、いろいろな外交問題がからんでいるのだから、一筋縄ではいかないに違いないのだが、日本政府は誠に低姿勢で、まるで拉致されたのが政府の責任であるかのように、拉致問題担当大臣を設け、外務省を先頭に国の全力をあげて解決に努力しますと頭の下げっぱなしのようだ。こんな優しい国が世界のどこにあるのだろうかと思う。

  根が浮き上がり白蟻に占領されて幹が空洞になり、今にも倒れそうな樹に何も手をおろそうとはせず「もし自費で樹を斬ろうものなら罰金と入獄だ」と脅かしていればいいブラジルのお役人と比較して日本政府の対応は対照的である。



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