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高橋祐幸のブラジル便り・目次
 

高橋祐幸(たかはし ゆうこう)

ブラジル・サンパウロ在住。1933年岩手県生まれ。1960年にブラジルにわたり、日本商社の現地法人(三菱商事)に35年間勤務。退職後ボランティアでトヨタカップ南米代表実行委員を15年間務め、川崎フロンターレ、大宮アルディージャのブラジル代表顧問を約8年間務めた。県立盛岡中学(旧制)で、八重樫茂生(メキシコ五輪銅メダル日本代表キャプテン)と同級生だったことがサッカーに携わる機縁ともなって、日本にもブラジルにも広いサッカーの人脈を持つに至った。


 

 


遺稿2
気になる大統領選 (2014/11/12)

◆ラーメンを美味しく食べる法
  9月の2週間の身体中の激痛は、祈祷師の魔法で和らいだが,身体中に鈍痛が残っている。それに食欲がすっかり無くなってしまった。
  ガルボン・ブエノ街(旧日本人町)の丸海スーパー(中国系)から「わさび茶漬け」と「即席ラーメン」を買ってきてもらって昼と晩に、ほんのひと口が喉を通る有様である。
  NHKテレビ「ためしてガッテン」を見ていたら、即席ラーメンを美味しく食べる方法というのがあった。水1リットルに重曹一匙一杯を溶かしてラーメンを茹で、スープは別に作っておいて、茹であがったらお湯を切ってスープを注いで食べると、生麺で作ったラーメン屋さんのラーメンみたいに美味しくなるということだった。さっそく試したところ、ホントにその通りだった。
  それでも一人分の袋の3分の1くらいの量しか食べられず「ガッテン」と手を打つまでにはいかなかった。
  病院の胃カメラ・CTスキャンは今週で終わり、来週は超音波・レントゲン・血液・尿などの検査があるようだ。検査結果が判るのは再来週になりそうだが、どんな結果が出るものやら。
  どうせ医者は無理にでも病気を作りだして、こんな治療をやれとか、これこれの薬を飲めとか、ご託を並べるに違いないと思っている。

◆大統領選を占う
  そんなこんなのなかで大統領選挙が迫った。
  現大統領ジルマ・ルーセフとそれを追う(元環境大臣)マリーナ・シルバが伯仲の競り合いを展開していたが ここ4、5日の支持率調査では、ジルマ候補が土壇場で優勢に変わってきている。
  何故だろうか?????
  ルラ政権時代に、政権の人気保持のために与野党かまわず、国会議員に「メンサロン」(でっかい月謝と云う意)の膨大なバラ撒きを続けて、その先頭に立った議員達が、いま裁判中だが、当時大統領官房長官だったジルマもからんでいたことが発覚した。
  その膨大なバラ撒きの資金源となっていたPETOBRAS(石油公社)の元総裁が、刑の軽減を条件に告白したところによると、それにもジルマがからんでいたこと。 
  先のW杯では大球場建設、開催都市のインフラストラクチャー整備に(関係大臣・官僚・議員・利権者どもの汚職を含めた)膨大な国家予算を注ぎこみ過ぎて国民の福祉・医療・教育などを見捨てたと、全国的な反対・抗議運動が巻き起こったにも拘わらず、いままた2016年のRIO OLYMPICの準備計画にたんまり賄賂・汚職も加えた潤沢な資金を注ぎこんでいる。
  良識ある国民の殆どは「もうジルマはご免だ」とウンザリしているにも拘わらず、何故支持率があがってきたのだろうか?????
  対立候補が飛行機事故で死亡したことをうけて、副大統領候補として立っていた参議院議員マリーナ・シルバが急遽「弔い選挙」として出て、あれよあれよとジルマに迫る伯仲ぶりだったのに、いま最終段階で支持率が下がってきたのは 何故だろうか?????

◆ジルマ候補のお色気戦略
  答えは簡単だ……。
  ジルマ政権は、12年間に「貧困撲滅」「空腹絶滅」をスローガンに掲げて、何の生産性もない北東伯のバガボンド(ならず者、怠け者ども)へのバラ撒きを続けてきた。その恩恵を蒙った連中は、ジルマがいなくなったら大変とばかりに大結束している。全有権者の50%を超すとも言われている。
  ジルマはさかんに(その票を買い取るのだと言わんばかりに)その政策の継続をしている。
  それに現政権はジルマの選挙資金をたっぷりと持っていて、ふんだんに使っている。
  候補者の宣伝ポスターを、電柱、街灯、ビルの壁、塀、歩行橋の手摺などに貼りつけることを禁止して、新しい候補の知名度が上がるのを防ぎ、テレビでの政見演説にこれまた膨大な国家予算から注ぎこんで、しかも放送時間を政党の議員数の大小で格差をつけている。ジルマはシルバーナの何倍もの時間を与えられているので、一日中テレビに現れている。
  以前に国会でも問題になった日系人の美容師を高額で雇い入れ、化粧と髪のセットに毎日長時間かけて、60才を越えているのにいまだに賞味期限の切れていないみたいなふっくらとしたお色気たっぷりぶりで、公共施設の工事現場などを訪ねては取り巻き群衆に手を差し伸べ、アブラッソ(抱き合って頬を擦り合わせる)など、女に弱いブラジル人はいとも簡単にコロリとさせちゃっている。

◆不利な立場の対立候補
  それに引き替えシルバーナ候補は貧しい黒人のあいの子生まれだから、美人でもないし、愛想もよくない。ジルマのようなお色気パーフォーマンスは出来ない。演説にしてもジルマのような大衆受けするスピーチではなく、どちらかと云うと真面目で固い言い廻しで大衆にはあまり受けない。
  それで損しているように見える。
  また、もう一人の対立候補、タンクレード・ネーベスと票の取り合いになっていることも一つの理由ではないかと思われる。
  ネーベスは、前々大統領のヱンリッケ・カルドーゾの正統な後継者と言われている。カルドーゾは、長い間「南米の眠れる巨人」と言われてきたブラジルの眠りを醒まし、半世紀以上も続いた悪性インフレを断ち切り、経済回復を成し遂げ、BRICsのメンバーに入り、新興国サミットのメンバー入りを実現させた人物である。
  しかし、その政策の後継者のネーベスは支持率3位である。
  こうしたことでジルマがマンマと当選するかも知れないムードが盛り上がってきている。
  ブラジルは、半世紀以上ものハイパー・インフレから脱却し、不況から救い上げ、資源(鉄鉱石、海底石油など)の開発に成功して、今やOPECのメンバー入りも果たした。農業開発にも大成功し世界の食糧基地と言われるまでになった。
この産業発展と好景気も、わずか10年足らずで元の木阿弥に戻り、南米の巨人は再び深い深い眠りに就くことになるのだろうか?
  そんなことが解らないブラジル国民大半の民意の低さを、参政権のない外国人である私は、ただ嘆き節を唸るばかりである。



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