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高橋祐幸のブラジル便り・目次
 

高橋祐幸(たかはし ゆうこう)

ブラジル・サンパウロ在住。1933年岩手県生まれ。1960年にブラジルにわたり、日本商社の現地法人(三菱商事)に35年間勤務。退職後ボランティアでトヨタカップ南米代表実行委員を15年間務め、川崎フロンターレ、大宮アルディージャのブラジル代表顧問を約8年間務めた。県立盛岡中学(旧制)で、八重樫茂生(メキシコ五輪銅メダル日本代表キャプテン)と同級生だったことがサッカーに携わる機縁ともなって、日本にもブラジルにも広いサッカーの人脈を持つに至った。


 

 


#38
2014ブラジルW杯の総括
(2014/7/25)

◆ブラッター会長の記者会見
  ブラッターFIFA会長はスイスへ帰国に当たって記者会見し「ブラジル大会は前回南ア大会の評価9.0点を上わまわり、9.25点の高い評価を得た」と発表した。
  「これは、私が世界中のソ−シアル・ネットワーキング・サービスからデータを取って調べた結果である」と冗談を言って記者たちを笑わせながら「これはあくまで試合で見せられた各国のプレーレベルの高かったことへの評価であって、大会運営上の成功が評価されたものではない」と付け加え、開幕戦寸前まで施設建設の遅れでブラジル政府にキリキリ舞いさせられたことへの皮肉まじりの発言だったようだ。
  今回の大会64全試合のゴール数は171点で、1998年フランス大会の最多記録と同じ、1試合当たりのゴール数は2.7点だった。伯仲した試合の質の高さは 次回のロシア大会でもそれを上まわることは難しいのではないかというコメントもあった。

◆一般市民が協力
  一方ブラジルの新聞が外国からの訪れた応援観戦者に問うたアンケートの答えは……。
  「ブラジルのホスピタリティはどうだったか?」という質問には、95%が「たいへん良かった」と高い評価だった。
  隣国アルゼンチンから大会期間中に訪れた応援観戦者は15万人に及んだと言われるが、サンパウロとリオの両市役所では、カーニバル専用スタジアム施設を開放し、市民のボランティア奉仕も提供して対応した。他の都市でもそれぞれ工夫を凝らした歓迎態勢を示したことが評価に繋がったのではないかと思われる。
  「大会運営のオーガ二ゼーションは?」との問いには「良かった」の答えが83%になった。
  開幕寸前までどうなることかと不安視していた市民も、いざ大会が始まってみると黙ってはいられなくなって、率先協力に参加したことが評価に繋がったのではないかと思われる。
心配されていた「治安問題」については「何も起こらず安心だった」との答えが82%を示した。
  W杯が始まると富める人も貧しい人も 悪党も善人も 泥棒も悪童も、過激集団の悪者どもも、それを取り締まる警官まで、全ての国民は国民休日とばかりに仕事を休んでサッカーに夢中になるので、いっとき治安問題もひと休みになったからだと思われる。

◆大統領選への影響は?
  この評価を得た翌日、ジルマ大統領は関係大臣、スポーツ代表者、治安担当高官などを大統領府に招いた。準備の遅れをめぐって一年以上にわたってFIFAと揉めるたびに「黙って仕上げを御覧じろ、W杯史上最高のW杯を実現してみせる」と言い続けてきたが「その通りになったでしょう」と自画自賛をぶち上げたという。
  10月の大統領選挙にW杯運営の成功が好影響を及ぼすことを期待しているのだろう。
  お祭りの興奮が醒めたときに国民が如何なる反応を示すか、10月の選挙に効果が残るかかどうか、まだ暫くは様子を見ないと判らない。



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