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高橋祐幸のブラジル便り・目次
 

高橋祐幸(たかはし ゆうこう)

ブラジル・サンパウロ在住。1933年岩手県生まれ。1960年にブラジルにわたり、日本商社の現地法人(三菱商事)に35年間勤務。退職後ボランティアでトヨタカップ南米代表実行委員を15年間務め、川崎フロンターレ、大宮アルディージャのブラジル代表顧問を約8年間務めた。県立盛岡中学(旧制)で、八重樫茂生(メキシコ五輪銅メダル日本代表キャプテン)と同級生だったことがサッカーに携わる機縁ともなって、日本にもブラジルにも広いサッカーの人脈を持つに至った。


 

 


#28
貴賓席に日本の首相がいない
(2014/6/19)

開幕式(6月12日 サンパウロ)

★開幕式に各国の貴賓
  開幕式でジルマ大統領は開会宣言をする筈だったが、ブーイングを恐れて宣言しなかった。それでも貴賓席に着席しただけで大ブーイングを浴びせられた。  
  貴賓席には、ブラッターFIFA会長、国連事務総長、出場国の元首たちが席を並べていた。しかし、日本政府を代表する貴賓の姿は見えなかった。
  ドイツ対ポルトガル戦にはドイツのメルケル首相とポルトガル大統領が隣り合わせて貴賓席におさまっていた。親しく懇談している姿がテレビ画面にしきりに映し出されていた。
  アメリカ対ガーナ戦には、アメリカのバイデン副大統領がオバマ大統領に代わってわって列席した。
  斯様にW杯は国際政治のロビーの役割を果たす力のある場にもなっているのである。
  もしW杯開幕式の貴賓席にジルマ大統領と隣り合わせで安倍首相が着席したら、日本のマスコミは「多くの難案件を抱えた国会会期中に首相が地球の裏までサッカー見物に出かけたとはけしからん」と報道するのだろうか?
  ブラジルは単に世界のサッカー王国と言われるだけではなく、政治・経済・文化あらゆる面でサッカーが国民の最も大事な位置を占めている国である。
  そのことを世界の国々は認識して、各国の首脳がワールドカップに姿を見せる。日本の代表が開幕式の貴賓席にいないことのマイナスに日本人は気付いていないのではないか。

★お題目だけの国際化
  W杯期間中、ブラジル戦がある日は国民休日となり、政府機関も市役所も学校も商店街も工場もお休みである。国民すべてはテレビの前に釘付となるので街はゴーストタウンと化してしまう。
  日本で大相撲初場所千秋楽やプロ野球の日本シリーズの日を「国民の休日」にしようとしたら、たちまち首相は馘になり、国会は解散になりかねないのではないか? ブラジルとは大違いである。
  今大会、ブラジルのテレビ放送のスポンサーに日本は1社も名を連ねていないが、W杯そのもののスポンサーでもある韓国の企業、HYUNDAI(現代)自動車は、素晴らしい出来栄えの画像広告を展開している。
  4銃士の銅像の前に高級車が止まって、窓からオイデオイデの手招きをしたら銅像が生き返って乗り込んでくる場面、広場で遊んでいる子供たちにオイデオイデの合図をしたら赤ちゃんを抱いたお母さんも一緒に走り寄って車に乗り込もうとする場面、広場中にいた何百人という子供たちまでが一斉にHYUNDAI車を取リ囲む画面など見事なコマーシャルが群を抜いている。HYUNDAI社はテレビコマーシャルばかりではなく、サッカーを通じてブラジルと友好・親善に寄与せんとする姿勢を常に広報しており、企業イメージの拡大に役立てている。日本企業とは大違いである。
  日本は、技術協力、資金援助、人材交流の三題目を唱えながら、外交辞令式の口先ばかりで、ブラジルの国民の心を捉える努力をしていない。
  国際化だのグロバリゼーションなどと、どうも日本は口先ばかりで、ワカッチャイネエナと私には思えるのである。



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