HOME

高橋祐幸のブラジル便り・目次
 

高橋祐幸(たかはし ゆうこう)

ブラジル・サンパウロ在住。1933年岩手県生まれ。1960年にブラジルにわたり、日本商社の現地法人(三菱商事)に35年間勤務。退職後ボランティアでトヨタカップ南米代表実行委員を15年間務め、川崎フロンターレ、大宮アルディージャのブラジル代表顧問を約8年間務めた。県立盛岡中学(旧制)で、八重樫茂生(メキシコ五輪銅メダル日本代表キャプテン)と同級生だったことがサッカーに携わる機縁ともなって、日本にもブラジルにも広いサッカーの人脈を持つに至った。


 

 


#25
リオ五輪! お前もか!
 (2014/5/14)

★五輪準備の遅れ
  ワールドカップ・ブラジル大会の球場建設工事の遅れがFIFAに指摘され、その報道が火の手を上げだしたのは、開幕が1年後に迫った頃のことだった。
  「開会までには全て完成させて世紀の大会にして見せる」とジルマ大統領が大啖呵を切り続けてきたにもかかわらず、開幕直前になっても、12球場の半分に当たる6球場が未完成のまま。工事の槌音を聞きながら大会に突入せざるをえないことが確認されて、サッカー王国ブラジルは世界に恥を晒すことになってしまった。
  そのうえ、ワールドカップの2年後にリオデジャネイロで開かれるオリンピックの準備も大きく遅れていることが分かり、IOC(国際オリンピック委員会)を慌てさせている。
報道によると、4月9日にトルコのベレクで行われたIOCと夏季五輪のスポーツ国際連盟連合(ASOIF)の合同会議で、リオの競技施設の建設遅れや宿泊施設不足などについて不満が続出した。
  IOC理事会は、建築の専門家などを派遣して、現地に三つの作業チームを作り準備を促すことにしたという。

★公表されない問題点
  オリンピックの競技会場のほとんどは、リオの南部バーラ・ダ・チジュッカと呼ばれる新興の高級住宅・商業地区に建設される。
  バスケットボールなど8競技を行なうデオドロ会場は、工事がほとんど始まっていない。
  また、リオ国際空港からひと山越えた先になるバーラ地区までの縦貫道路が建設されることになっており、リオ港(グァナバラ湾)の浚渫と周辺の美化も課題だが、これらの準備がほとんど進んでいないという。
  世界富豪番付の一人だったブラジルの財閥エイケ・バチスタが豪華客船をホテルにして、港湾リゾートセンターを建設すると云う計画もいつの間にか消えてしまった。
  準備は進んでいないが、競技場施設、インフラ工事などに既に160億ドルが支出されている。これだけの資金が、どこに使われたのか、完成の見通しはどうなのか、などの問題点は公表されていない。IOCから警告されたことはマスコミが伝えているが、詳細は報道されていない。

★第一は政治の問題
  オリンピック準備の遅れも、ワールドカップ球場工事の遅れと同根で、お定まりの利権争い、縄張り争い、予算の分捕り争いなどの結果である。
  税金による工事を発注してリベートを懐に入れる。予算が足りなくなって工事が遅れる。追加予算を組んで、そこでまた利権が発生する。そこに政治家や官僚や工事関係企業の利害が絡む。そういう構図である。
  IOCも、その辺はお見通しのようで、IOCのバッハ会長は「第一は政治の問題だ」と語っている。
  ブラジルに建築の専門家がいないわけではない。技術レベルが低いわけでもない。
  ワールドカップについてもオリンピックについても、工事の遅れは技術的な問題ではなく政治的な問題である。そこに10月の大統領選挙も絡んでいる。
  ワールドカップ開幕を控えて手一杯のときにオリンピックにまで問題が燃え広がっては、ジルマ大統領は弁明のしようもない。
  「リオ叩き」に転じたマスコミの声にも何ら反論もせず、予算の配分も使途も明細も公表しないまま、政府全体がダンマリに徹している。


◆「ブラジル便り」に対するご意見・ご感想をお寄せください。 こちらから。


Copyright©2004US&Viva!Soccer.net All Rights Reserved