#16
ネイマールに二つの重大事
W杯史上最高の6回優勝を狙うブラジル代表の選手に誰を選ぶか? フェリペ(FELIPE)監督の頭に真っ先に浮かぶのは、昨年(2013年)5月までサントスFCで活躍、6月のコンフェデレーションズ・カップで代表チームの主力選手として優勝に貢献したあとスペインのバルセロナに移籍したネイマール(NEYMAR)ではないだろうか?
そのネイマール選手に降って湧いたように二つの重大な出来事が発生した。
その1)右足首に重傷
この正月16日、スペイン王室杯、対GETAFE FCとの試合中に右足首に激痛を覚えて転倒して退場し、診断の結果、強度の足首から甲部関節捻挫からアキレス腱にまで及ぶ筋肉脈筋の破裂と切断と判明、治療は最短でも3ヵ月から4ヵ月に及ぶとのこと。来る2月18日のMANCHESTER CITYとの対戦が予定されている欧州チャンピオンズリーグ準々決勝戦と、3月5日にヨハネスブルグで予定されているブラジル代表対南ア代表の親善試合(国際Aマッチ)を前に戦列離脱を余儀なくさせられたのである。
医師団は6月のW杯大会前には治療が終わって戦列復帰は間違いなく実現すると言ってはいるが、練習不足と気力(戦意)回復の遅れが心配され、フェリペ監督にとっては大きな誤算だろう。
その2)バルセロナ移籍に黒い噂
2009年、17才でプロ・デビューを果たしたネイマール選手は、サントスFC在籍中に2011年コパ・リベルタドーレス(南米クラブ選手権)優勝、2010、11年コパ・ド・ブラジル優勝、2010、11、12年サンパウロ州選手権3年連続優勝をチームにもたらし、一躍世界の注目を浴びるスター選手となった。
2013年5月にサントスFCから公表されたバルセロナへの移籍契約では、バルセロナが払ったのは2,710万ユーロで、そのうち1,710万ユーロがサントスFCに、1,000万ユーロがN&N社(ネイマールの父親が社長の法人)に宛てたものだったということだったが、その後、JOSEP BARTOMEU バルセロナ会長が明らかにしたところによると、契約が公表されるかなり前からサントスFCが知らないうちに、「プレ・コントラクト」(事前確認覚書)をネイマール親子と密かに交わしていて、なんとN&N社に更に3,000万ユーロを支払い、ネイマール契約書署名ボーナスとして1,000万ユーロ、ネイマールの代理人(GABRIEL氏)に790万ユーロ、ネイマールの父親への謝礼270万ユーロ、ネイマールのコマーシャル権利金400万ユーロ、ネイマールの社会福祉協力金250万ユーロ、N&N社が新人発掘・紹介を継続する報奨金200万ユーロの合計5,910万ユーロが支払われていたという。
当初公表された金額の(2,710万ユーロ)の2倍以上に及ぶ大金が裏で払われていたわけで、前に公表されていた金額を合わせると実に8,620万ユーロ(邦貨約120億円超)と云う巨額が支払われたのが実態だったことになる。
ブラジルの新聞は連日、グラフ式の図表入りの記事を大々的に流し続けている。
サントス・クラブは検察庁に実態調査を要求しており、バルセロナ会長は引責辞職を洩らすなど大旋風が吹き荒れているが、FIFAは規定で禁じられている「プレ・コントラクト」を交わしたことの処罰(4か月間の試合出場禁止)を検討することをほのめかしており、大混乱はおさまりそうもない。
いますぐに出場停止になれば、足の治療に3〜4カ月かかるので、どうせ試合に出られないのだから、W杯開会までに出場停止処罰の期限が切れれば「不幸中の幸い」と言えるかも知れない。
ちなみに近年バルセロナが契約したトップ4選手の契約金はメッシ(MESSI)が1,600万ユーロ、イニエスタ(INIESTA)が1,200万ユーロ、シャビ(XAVI)が1,000万ユーロと云われ、今回のネイマールの桁違いの巨額な裏取引が暴露されたことで、果たしてFIFAは4ヵ月の出場停止だけの処分で済ませるかどうかさえ確定した訳ではないのだから、フェリペ監督は枕を高くして眠れない不安と焦燥から逃れられない時を過ごすことになりそうだ。
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