サッカーの視点からみた「日本プロ野球の再編成」
(2004/9/20)
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■日本プロ野球の問題点
日本のプロ野球界が再編成に向かって大揺れになった。
日本経済新聞が6月14日朝刊の特ダネで、パシフィック・リーグの近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウエーブの合併を報道したのが発端。鉄道会社の近鉄が球団の赤字にネをあげて、プロ野球から手を引こうとしているという内容である。
これが、きっかけで日本のプロ野球を再編成しようという動きが出てきた。その中で2リーグがいいか、1リーグに統合するのがいいかが問題になった。パ・リーグ5球団ではやっていけない、あと一組み合併して10球団で1リーグにしようという案が出たためである。プロ野球の規模を縮小しようという消極的な考えだとして、反対論が噴出した。
問題点は次のとおりだ。
1)1リーグと2リーグ制のどちらがいいか?
2)アマチュア野球との関係をどうすればいいか?
3)各球団の「巨人依存」の考えが改革のガンではないか?
4)プロ野球は地域に根をおろして運営できるだろうか?
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■1リーグ制か、2リーグ制か?
プロ野球は米国の大リーグも、日本も2リーグ制である。
サッカーでは、欧州でも南米でも、また日本のJリーグも1リーグ制だ。
興行としては2リーグ制の利点もある。
2つのペナントレース、日本シリーズなど優勝争いのヤマ場を複数回作って盛り上げることができる。
2リーグ制の欠点は、強いチーム同士の好カードが少なくなることである。たとえば、これまでの制度では、巨人対西武のカードは、両チームとも日本シリーズに進出しないかぎりタイトルをかけた試合としては見ることができない。これは競技レベル向上のためにも、ショウ・ビジネスとしても損である。
1リーグ制であれば、同じレベルのチームが集まって試合をするから好カードが多くなり、ファンはいい試合をたくさん楽しむことができる。
制度としては1リーグが2リーグよりも合理的である。
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■アマチュアとの関係が?
プロ野球の組織は、山の上に浮かんだ雲のようなものである。
日本の場合、6球団ずつ2つのプロだけの組織が、アマチュア野球の組織とは離れて浮かんでいる。
サッカーの組織は富士山型のプロアマ共存である。プロもアマチュアも同じ組織に属して、日本では、その頂点にJリーグがある。頂点から底辺へ下に開かれてつながっているから、低いレベルのチームでも強くなれば順次、上にあがることができる。Jリーグから撤退するクラブがでても、すぐ下からあげて補充できる。
プロ野球は少数独占の興行のための閉じた組織だから、撤退する球団が出ても簡単には補充できない。新しいチームが加わるのは、商売がたきが増えることだから必ずしも歓迎はできない。アマチュアとは別組織のため普及に直接貢献もできない。
スポーツ振興のためには、サッカー型のプロアマ共存がいい。
野球もプロとアマの間の垣根を低くして連携強化を考えるべきである。
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■「巨人依存」がガン?
1リーグ制の動きが表に出てくると、セ・リーグの巨人以外の5球団は2リーグ制維持を主張しはじめた。阪神タイガースがその中心だった。
理由は、10チームで1リーグにすると巨人との対戦カードを減らさなければならないからだという。巨人戦は、入場料収入もテレビ放映権料も他のカードにくらべて断然多い。したがって1リーグ制になると減収になるという計算である。
一方、パ・リーグの球団はセ・リーグとの合併による1リーグをめざしている。
現在のパ・リーグは不人気で、入場料収入もテレビ放映権料も期待できない。1リーグになれば人気球団の巨人との対戦カードができるから、経営が成り立つようになるだろうと期待している。
1リーグ制論も、2リーグ維持の主張も、根っこは同じ巨人依存体質だ。
プロの興行であれば、自分のチームの人気をあげて、自球団の収入になる地元開催の全カードで収入をあげることをめざすべきである。
各球団の巨人戦に頼る考えがガンである。 |
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■地域に根をおろせるか?
サッカーのJリーグは、企業のスポーツから脱け出し、親会社に頼らないで地域に根ざして運営しようという考えでスタートした。多くのクラブは企業チームを母体に生まれ、いまでも企業の影響を抜け出せないクラブも多いが、しかし「地域に根ざすクラブ」というホームタウン制は、かなり理解され、成功している。
プロ野球も地域(都道府県)単位のフランチャイズ制をとっているが、首都圏のチームは地域とのつながりを強くすることがなかなか難しい。とくに巨人は全国紙の新聞社が親会社だから地域性が強すぎると都合が悪い。またテレビ中継はふつうは全国中継だから、視聴率をあげるにはチームの人気は全国区であるほうがいい。
こういう関係にテレビの多チャンネル化がからんでくる可能性もある。特定球団だけでなく多くのチームの試合が全国中継される機会が増えるだろう。一方で、地域のチームの試合が地域のチャンネルに取り上げられる可能性もある。メディアの急速な変化によってプロスポーツがどう変わるかについては、まだ見通しのたたないことが多い。
ともあれ、プロ野球を地域に根ざして独立に運営ができるようにするのが課題である。 |
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■提言:プロ野球も、1リーグ制に
日本プロ野球再編成のための一つのシナリオとして「1リーグ2部制」を提案する。
1)トップレベルは1リーグとする。強いチーム同士による好カードを多く提供するためである。
2)1リーグの下に2部リーグを新設する。主として地方都市を本拠地に新しい球団が新規に参入する機会を作るためである。
3)2部リーグの選手は、必ずしもフルタイムのプロであることを要しない。セミプロやアマチュアが共存できるようにするためである。
4)2部リーグの球団は1部リーグのチームの2軍でなく独立に運営するものとする。野球界の裾野を広げるためである。
5)社会人野球との協力関係を強める。野球界を一つにまとめた富士山型の組織への第一歩にするためである。
サッカーの組織のよさを取り入れて、新しいプロ・スポーツの在り方を創造しよう。
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