各国のサッカーの文化、あるいは社会についての本を3冊読んだ。
『栄光のドイツサッカー物語』(明石真和著、大修館書店)は、ワールドカップを中心にドイツ代表チームの歴史をたどった本である。著者は駿河台大学のドイツ語の教授で、ドイツの文献を読みこなし、毎年、ドイツに出かけてベッケンバウアーなどの元選手、監督にも直接会って話をきいている。しかしスターを持ち上げたり、技術や戦術を表面的に分析したような上滑りの本ではない。ヒトラー時代のサッカーから東西ドイツ統合後まで、政治や社会の変化をたどり、南北ドイツの文化の違いにも目を配っている。
ぼくがワールドカップのためにドイツに行った後に出版され、あとからドイツに来た友人が持ってきてくれた。「飛行機のなかで一気に読んだ」と言っていた。内容は本格的だが読みやすい。
『VIVA!サッカー探求』(ビバ!サッカー研究会編、中央公論事業出版)は、ぼくの仲間のグループが自分たちで書いた本である。ドイツから帰ったあと、新宿の紀伊国屋書店をのぞいたら平積みになっていた。筆者はそれぞれ、会社勤めなどをしている社会人だが、熱心なサッカーファンだ。
「メディアはワールドカップをどう伝えてきたか」という記事には1930年(昭和5年)に第1回ワールドカップがウルグアイで開かれたとき、そのニュースが、当時の日本の新聞に掲載されたかどうかを、ちゃんと調べて書いてある。歴史を知らなければ、その国の文化はわからない。文化を知らなければ、サッカーもわからない。ぼくの仲間たちは、そこらあたりを、ちゃんと心得ている。
『フチボウ、美しきブラジルの蹴球』(アレックス・ベロス著、土屋晃、対馬妙訳、ソニーマガジンズ)は、世界一のサッカー王国の文化と社会を徹底的に調べた本である。筆者はイギリスの新聞の特派員として1998年にブラジルに来て、2001年まで現地をくまなく取材して歩いた。全15章の厚い本だから、簡単には紹介できないが、ブラジルのサッカーを知るためには、必ず読んでおくべきだと思う。
ぼくがとくに興味を持ったのは、ガリンシャについての章である。天才的なドリブラーで、ペレとともにブラジルを世界一に導いた選手だが、ペレが地位と富を手にしたのに対し、ガリンシャはブラジルの大衆の間で圧倒的な人気を集めながら貧窮のうちに死んだ。その間の事情を、やっと理解できた気になった。
サッカーには、いろいろな楽しみ方がある。しかし、広く、深く楽しむためには、このような本が役に立つ。 |