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サッカーマガジン 2006年7月25日号
ビバ!サッカー

オシム新監督を歓迎する

 ジェフユナイテッド市原・千葉のイビチャ・オシム監督が、日本代表チームを引き受けることになった。適切な人選だと思っている。
 ワールドカップ開幕前の5月27日に東大サッカー部主催のシンポジウムがあった。そのとき、パネリストの岡野俊一郎さんに対して、フロアから「ジーコ監督の後任には、誰がいいと思いますか」という質問が出た。司会をしていたぼくが「岡野さんは、立場上、答えにくいでしょうから、ばくが代わって個人的意見を言います」と話を横取りした。
 「ジェフのオシム監督がいいと思います。それも2006年の北京オリンピックを含めて引き受けてもらうべきです」
 壇上の岡野さんが、にこにことうなずいた。岡野さんは日本サッカー協会の元会長で、スポーツ界の最高幹部だから個人的意見でも発言すれば影響が大きい。あるいは選考経過の報告を聞いているかもしれない。そうであれば秘密を守らなければならない。そう思って、無責任な立場のぼくが発言したわけである。
 オシム監督がいいのは、ジェフでの指導ぶりからみて、いまの日本のサッカーにあっているからである。
 オシム監督は「走るサッカー」をさせているといわれていた。しかし、ジェフの試合ぶりを見ていると、単なる「走るサッカー」ではない。また試合後の記者会見をきいても、そんな単純な考え方ではない。若い選手たちを伸ばしながら、手持ちの選手たちを生かせるサッカーを求め、一つ一つの試合では適切な対策を立てている。つまり、若手育成の指導者としても、チームの監督としても、また戦略家としても経験豊かである。
 こういうコーチが、いまの日本には必要である。
 日本のサッカーのトップレベルの選手層は、まだまだ薄い。国際レベルで通用しそうな選手は一握りである。欧州や南米の国の監督のようにクラブから必要な選手を集めるだけで重要な国際大会で戦うのは難しい。ある程度は、代表チームの監督が自分で、若手から手塩に掛けて育成する必要がある。だから若手の代表チームであるオリンピック・チームもみてもらうべきである。そこで、その時点で反町康治監督の就任は決まっていたが、あえてオリンピック・チームも担当してもらうべきだと考えたわけである。
 ワールドカップがまだ続いているさいちゅうに、この人事がもれたのは残念だ。「日本の、敗退の話題を忘れさせるためではないか」という人もいる。そんなつもりではないだろうが、ワールドカップを日本だけの視点でしかみない人たちがいることは感じている。


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