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サッカーマガジン 2006年7月11日号
ビバ!サッカー

入場券問題でFIFAを追及せよ

 日本はクロアチアに0対0の引き分けだった。「決定力不足」と、お決まりの論評が日本では行なわれているのだろうな、とドイツにいて勝手に想像している。
 日本がつまずいた原因は、それほど単純ではない。でも、日本チームについての記事は、あふれているだろうから、ここでは「選手たちは、最善をつくしてがんばった」とだけ記して、他の話題を取り上げたい。
 クロアチア戦からブラジル戦にかけて、ドイツの町に、日本人の姿が、ますます目立つようになった。第1戦のころは、若いサポーターが多かったが、あとから来た人には年配の社会人も多い。会社勤めの人が、短い休暇をとって来たのだろう。そういう人たちの話を聞くと、入場券を手に入れるのに非常に苦労して来ている。いや、苦労というより、ひどい目にあっている。
 列車で乗り合わせた人に聞いた話である。日本戦3試合の切符のために、インターネット上で見つけたヨーロッパの業者に50万円を支払った。代金はクレジットカードで引き落とされた。ところが、日本ヘクーポンを送ってくれる約束だったのに届かない。メールで問い合わせると「フランクフルトの事務所へ取りに来い」と返事が来た。不安を感じながら出発してフランクフルトに来てみると、ちゃんと事務所はあったが「切符は会場地の事務所に送ったから、そこで受け取ってくれ」という。「ほんとだろうか」と疑いながらも、列車で会場地に向かう途中だということだった。
 同じようなケースで日本から出発するのをあきらめてしまった人もいるという。また、ドイツには来たが、たらいまわしにされ、言葉の壁もあって断念した人もいる。いずれも50万円以上を放棄したわけである。
 粘り強く現地の事務所にたどり着いて本物を手にした人もいた。だから「サギ」とは、いえないのだが、放棄する人が出るのを見越して手続きを、めまぐるしく変え、煩雑にしているのであれば「悪徳商法」である。
 日本の旅行会社の世話で来ている人は多い。1週間のツアーで70万円。そのうち40万円が日本戦2試合の入場券代だという。入場券の定価はグループリーグ一般席の、いちばんいいところで100ユーロ、約1万5千円である。それからみると法外な価格だ。
 現地には「ダフ屋」もかなり出ている。駅や競技場の付近で「切符いります」と書いた札を掲げている人が、実は「ダフ屋」だったりする。
 日本の第1戦のときキックオフ3時間前に駅前で聞いたら、240ユーロ、約3万6千円という言い値だった。試合開始直前には定価を割っていたそうだ。
 こういうことが起きるのはFIFA(国際サッカー連盟)の入場券発売方法が悪いからだと思う。グローバルな社会問題としてFIFAを追及する必要がある。


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