フランクフルトに借りた自称「ビバ!ハウス」を根拠地に、各地の試合を見て回っている。日本の第1戦もここから日帰りでカイザースラウテルンに出かけた。
結果はオーストラリアに1−3の逆転負け。直接の敗因は、単純化していうと「暑さ」である。同じ暑さが、オーストラリアよりも日本に大きく影響した。
その理由は3つある。第1は体力差、第2はチーム戦術のスタイルの違い、第3は両監督の選手交代策である。
でも、こういうことについては、すでに日本のマスコミが、さんざん報道しているだろうから、ここでは取り上げない。説明は、新たに始めたブログ「牛木のワールドカップ日誌」に書くことにした。
というわけで、このコラムでは、関連した別の話を紹介しよう。
6月12日の夜、「ビバ!ハウス」に戻ったら、ペンションのマスターが「最後の5分間で3点とはね。サッカーでは、どんなことも起こりうるんだよ」と慰めてくれた。電車の中で話しかけてきたドイツ人も、同じことを言っていた。それを聞いて、この試合は「最後の5分の3ゴール」として、ワールドカップの伝説になるのかな、と思った。うれしい話ではない。でも、これをはね返してベスト16に進出すれば、それはそれで一つの伝説になるだろう。ワールドカップは、たくさんの伝説を歴史に残してきている大会である。
残念な結果にはなったけれど、日本代表チームの仕上がりが非常によかった。このことも記録しておきたい。選手たちの体調は万全のように見えた。「しっかり戦おう」という気力もプレーぶりに表われていた。攻めの組み立て、守りの組織もしっかりしていた。前半はそうだった。それまでに試合をしたほかの国とくらべて、チームの仕上がりぐあいは、ナンバー・ワンだったと思う。
ブラジルやイングランドのような優勝候補は、準々決勝か準決勝に照準を合わせてコンディション作りをする。だから初戦で1−0の辛勝でも、ふしぎはない。
しかし、日本は「まず1勝」を狙うべき挑戦者の立場である。こういうチームは、開幕後の初戦にベストの状態になるように、チームを仕上げていかなければならない。それは、きちんとできていた。その点では、日本の準備は間違ってはいなかった。それでも、開幕とともに真夏日が襲来するような予想外のことが起きる。それがサッカーである。
もう一つ付け加えると、前半26分の日本の先制点は、反則を取られていてもおかしくはなかった。中村のけったボールがゴール前に送り込まれたとき、なだれ込んだ高原が、ゴールキーパーを妨害していた。ヒディンク監督が猛烈に抗議したのは無理もない。でも、だからといって日本の前半がよかったことを割引する必要はない。サッカーの面白さは得点だけではないし、勝ち負けだけでもない。
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