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サッカーマガジン 2006年6月27日号
ビバ!サッカー

フランクフルトの大フェスタ

 10度目のワールドカップヘきた。ワールドカップを現地で見るのは1970年メキシコ大会から37年にわたって、10回連続だ。
 今回はフランクフルトに簡素なペンションを借りた。ここを本拠地にドイツ各地の様子を見てまわるつもりである。
 ペンションのオーナー兼管理人は、30歳台くらいの元ボクシング選手である。開幕4日前に到着すると、いきなり「フェスタ(お祭り)があるぞ。無料だぞ」という。「フランクフルト・ファンフェスタ・2006FIFAワールドカップ」と銘打ったその会場まで、ペンションから歩いて10分ほど。さっそく行ってみた。
 市の中央を流れるマイン川のどまんなかに、パブリック・ビューイングのための巨大なスクリーンが立っている。太い鉄の杭を4本、川の中に打ち込み、その上に高さ4.5メートルの長方形の箱を載せた形である。この箱の裏表に144平方メートルの、でっかいディスプレーがあり、大会期間中、毎日、両岸からテレビの中継を見ることができる。
 北側の護岸の部分に3千人分ほどの仮設スタンドがある。南側には「障害者のために」と書かれた屋根つきの大きなテラスが仮設されていた。競技場に行くことが難しい人びとに、優先的に配慮しているのだな、と思った。
 パブリック・ビューイングを中心に、川の両岸、3キロにわたって、さまざまな催しが行なわれている。音楽や芸術展示や市民のスポーツなどである。
 河川敷の部分にテントの屋台が並んでいる。北岸は公式グッズの販売など主としてスポンサー関係の出店で、南岸は食べ物屋である。食べ物屋の多くは、アラブ系などドイツ以外の出身の人がやっているようだった。ドイツで暮らす人びとの多様化が、ここに示されている。ビールやワインもある。アルコール飲料禁止などとヤボなことは言わないようだ。
 サッカー中継以外のイベントは、開幕1週間前の6月3日からすでに始まっていた。午前11時から夜中の1時まで。金曜、土曜と祝日の前日は2時まで。ドイツの人びとは結構、夜更かしだ。
 「ドイツ国内の400カ所でパブリック・ビューイングがあるが、これほど大規模なのは、フランクフルトだけだ」というのが関係者の自慢だった。しかし、ぼくは、ドイツ全体が、ワールドカップを単なるサッカーの競技会としてでなく、国民のお祭りとして、楽しむのではないかと思った。
 10度目のワールドカップを、競技だけでなく、ドイツの大衆の受け止め方に注目して見てみたい。


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