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サッカーマガジン 2006年6月6日号
ビバ!サッカー

巻をドイツへ連れて行った!

 ワールドカップの日本代表に巻誠一郎が選ばれた。「ビバ!」と、おおいにわが意を得た。というのは1カ月前、サッカーマガジンの5月2日号に「巻をドイツヘ連れて行きたい」と書いておいたからだ。ジーコ監督は本当に「巻をドイツヘ連れて行った」ね。
 5月15日に発表されたドイツ行きのメンバーは、ぼくの想定どおりだった。予想していたジーコ監督の発表と一致したという意味ではない。「ぼくだったら、こう選びたい」と想定していたのとぴったりだったという意味である。
 久保竜彦がはずされたのも想定どおりだった。5月2日号には、あからさまには書かなかったが、4月の時点で「久保は無理だ」と思っていた。理由は「勝利のメンタリティー」が衰えているように見えたからである。
 3月の国際試合を見て、そう感じたので、ベテランのフォトグラファーにきいてみた。ゴール裏でファインダーからのぞいている人は、スタンドでは見えないものを見ていることがある。
 「久保はゴール前でも、まともに競り合っていないよ」というのが、その人の意見だった。
 「ケガを恐れているのかな。親善試合だからね。本番では本気を出すかもね」
 「ふだん本気で競り合っていない選手は本番になっても力は出せないよ」
 「なるほど」と思った。
 そうであれば、かりにケガがよくなっても、久保はワールドカップで通用しないだろう。
 それより前から、ぼくは友人たちに、こう言っていた。
 「みんなが久保に期待しすぎるのは、久保のゴールに甘い思い出があるからじゃないのかね?」
 ロスタイムに決勝点を挙げたり、親善試合でみごとなシュートをした場面が脳のなかに焼き付いている。同じことがワールドカップでも起きるだろうとイメージする。そのためではないか。
 「それに、久保と同じタイプが、ほかにいないからだろ?」
 身長181センチの体格、すぐれた技術、すばやく、強いシュート力。そういうストライカーは日本にはなかなかいない。しかし、その力を発揮できないような状況であれば、無理に使っても意味はない。別のタイプのストライカーの特徴を生かして戦うほうがいい。
 ジェフのオシム監督が4月に蘇我での試合のあと、こう言っていた。
 「この2年間に巻は技術的にずいぶん進歩した。ドリブル以外はね」
 ジーコ監督には、ドリブル以外の巻の特長を生かしてもらいたい。


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