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サッカーマガジン 2006年3月21日号
ビバ!サッカー

小笠原の超ロングゴールを伝説に

 日本代表チームのワールドカップ・イヤー第1次強化シリーズが終わった。2月中・下旬、米国との遠征試合にはじまって、ドルトムントでのボスニア・ヘルツェゴビナとの対戦まで2勝1引き分け1敗。ワールドカップの本番に向け、日本代表チームにとって、どんな収穫があったか、いろいろ話題になった。
 でも日本代表チームにとってではなくぼく個人にとっての収穫は、小笠原の超ロングゴールを見たことである。
 2月18日に静岡エコパで行なわれたフィンランドとの試合。後半12分に小笠原満男が、ハーフウェー・ラインの手前からゴールヘ向けてキックした。起点はぼくの座っていた記者席の目の前だった。ボールは山なりのカーブを描いてゴールの右上すみに吸い込まれた。前に出ていた相手ゴールキーパーのカベンは、あわてて下がりながらはじき出そうとしたが届かなかった。これで2−0になった。
 このボールの飛距離を何メートルと見ただろうか。翌日の新聞で比べてみた。60メートル、65メートルなどまちまちである。中には50メートルと書いてあるのがあった。ハーフウェー・ラインの手前から蹴ったんだよ。ワールドカップの会場にもなった競技場の国際規格のフィールドの縦の長さが何メートルか知らないのか。その半分以下のはずはないではないか。
 日刊スポーツは「56.917メートル」と端数まで出していた。最近はコンピュータを使って、こういう数字を出せるらしい。ただし、はかり方によって違いが出るだろう。ゴールラインまでのタッチラインに平行な距離か、ゴールの中心点までの斜めの距離か、ボールがゴールに入った場所までの実際の飛距離か。線の引き方によって違ってくる。ばくの見たところでは、実際の飛距離にして60メートルを超えていたように思う。
 1970年のメキシコ・ワールドカップのとき、ペレが同じくらいの距離からシュートしたことがある。ゴールにはならなかったが「なぜ狙ったのか?」と聞いたら「コールキーパーが前に出ているのが見えたのでね」と答えた。「そんな遠くまで、まわりを見ているのか」と感心した記憶がある。
 試合後、小笠原は「ミスキックです」と答えて記者たちをケムにまいたらしい。しかし、これは明らかに狙ったものだったようだ。ジーコ監督は「ヨーロッパのゴールキーパーは前に出ていることが多いからロングシュートを狙え」と指示していたという。
 ぼくは、こういう話が好きである。これは伝説のゴールになる。だから新聞でも、サッカーマガジンでも、詳しく記録して歴史に残してほしいと思う。


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