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サッカーマガジン 2006年1月31日号
ビバ!サッカー

野洲のサッカーに特別賞を!

 わがビバ!サッカーが独断と偏見で選考する2005年度日本サッカー大賞と殊勲、敢闘、技能の3賞は、すでに先週号で発表したところではあるが、今回さらに「特別賞」を追加する。ビバ!サッカーは融通自在であるから、締切りが過ぎていても気にしたりはしない。
 ジャジャーン!
 「ビバ!サッカーの特別賞として、2006年正月の高校選手権で優勝した野洲高校チームの山本佳司(けいじ)監督を表彰いたしまーす!」
 この表彰には賞状も賞金もなく、ただその名前を、このページに記録するだけである。しかし、その功績を歴史に書き留めておくのが、このコラムの使命であると自ら信じているので、あえて特別賞を追加するしだいである。
 新しいスタイルで優勝した野洲のサッカーがどんなものか、山本監督がどんな人であるかは、新聞などで紹介されていたので繰り返さない。ここには、ぼくの感想だけを記しておくことにする。
 新聞には「華麗な個人技」「足わざ絶妙」というような表現が使われていたが、ぼくの印象は「しぶとい個人技」だった。野洲のディフェンダーがボールを奪う。鹿児島実業のプレーヤーがすぐに詰めてくる。しかし野洲のディフェンダーはボールを離さない。2人、3人の相手に取り囲まれて圧迫されながら、キープし続ける。そして、うまくかわせれば、あるいは小さな隙が見つかれば、近くに寄ってきた味方にパスをする。そういう場面が多かった。相手の詰めを避けようと、ボールを奪ったらすぐに展開する場面は目立たなかった。
 もう一つ印象に残ったのは「守りのうまさ」である。きびしく、激しく守るのではない。1人が寄せ1人が次を狙う。頭脳的な「グループの守り」である。
 決勝戦は、バックスタンドの野洲の応援席の後ろで見ていた。前半は野洲の守備ラインが目の前だった。それで野洲のディフェンダーの良さが、とくに目に付いたのかもしれない。荒掘と内野がよくやっていたように見えた。大会優秀選手のなかに、この2人が入っていなかったので「あれれ」と思った。
 1対1の延長後半7分、野洲の決勝点はみごとなパスの組み立てだった。だから「華麗なパス」という新聞の見出しも間違いではないが、ぼくの見たかぎりでは野洲の大きな勝因は、ディフェンダーの頭脳と粘りだった。
 野洲のサッカーについては、取り上げたいことが、ほかにもあるが、とりあえずは、こういうプレーヤー、こういうチームを生み出した野洲の代表として、山本佳司監督に特別賞を贈ることにする。


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