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サッカーマガジン 2005年11月8日号
ビバ!サッカー

蘇我フクアリヘの希望と期待

 「きょうは記者が多いね。試合を取材に来たのかね。それともスタジアムを見にきたのかね」
 これがオシム監督の第一声だった。10月16日、千葉市のフクダ電子アリーナでJリーグの「こけら落とし」の試合が行なわれたあとである。「申し訳ない、実はスタジアムを見に来ました」とぼくは内心でつぶやいた。
 蘇我の新しいサッカー・スタジアムを地元のファンは略して「フクアリ」と呼んでいる。
 「フクアリの第1戦を見に来て、ちゃんとビバ!サッカーに記録すべきだよ。これは歴史だからね」
 友人がこんなメールを寄越したので、重い腰を上げて出掛けたのである。 
 JRの蘇我駅は、東京からまっすぐ電車が通じていて交通の便はいい。スタジアムは駅から近い。千葉市の鶴岡市長は、駅から歩いて行ってみたそうだ。ぼくは公用車を使える身分ではないから、もちろん歩いた。10分ぐらいである。 
 行きはよかったが、帰りはちょっと難儀した。両監督の記者会見が終わってからスタジアムを出たのだが、まだサポーターたちがおおぜい歩いていた。途中に国道を横断する大きな歩道橋があって、そこで人びとがつかえている。1万7千人もの観客の帰りを処理するのは、なかなかたいへんなようだ。 
 「歩道橋の手前の右側に広い土地があったな。試合の日だけ、あそこに屋台村を作るべきだよ」と、ぼくは勝手なことを考えた。試合のあとで立ち寄って、仲間と飲み食いしながら、わいわい試合批評などをやっているうちに、人混みがさばけるだろうというアイデアである。でも、警察や保健所やご近所の住民パワーなどいろいろあって難しいだろうね。
 とはいえ試合の前や後の「いろいろ」もサッカーの楽しみのうちである。新しい施設を単なる「貸し会場」にしないで、ここを中心に大衆のいろいろな楽しみの場にしてほしいと希望している。
 競技場そのものはすばらしい。サッカー専用でコンパクトで見やすい。ここで地元の大衆の熱烈な応援を受ければ、選手たちは、これまで以上の力を出せるだろう。観客が定着すれば「ジェフユナイテッド市原・千葉」のクラブ経営も立直るだろう。 
 この日の試合は横浜F・マリノスと2対2の引き分け。緊迫した攻守で、しかもゴールがたくさんあって、いい試合だったと思う。でも地元のジェフとしては、2度リードして2度追い付かれ、2点目はロスタイムになってからの失点だったから、歴史に記録してほしい試合ではなかったかもしれない。


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