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サッカーマガジン 2005年10月11日号
ビバ!サッカー

野球とサッカーのW杯の違い

 サッカーのワールドカップにあたるような大会を野球でもやろうという計画が本決まりになったようだ。「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)という名称で、来年3月に2次リーグ以降が米国で開かれる。世界各地域の代表、16チームを集めた国別対抗戦である。
 この計画が持ち上がったときから、ぼくは関心を持って報道を追っていた。サッカーのワールドカップと、どこが同じで、どこが違うか、はっきり見極めたいと思ったのである。
 日本の新聞には「サッカーのワールドカップのようなプロ野球の国別対抗戦」と書かれている。しかし、この表現は正確ではない。
 ワールドカップは「プロ・サッカー」の大会ではない。プロもアマも含めた世界のサッカーの祭典である。決勝大会に出場するトップクラスのプレーヤーは、ほとんどがフルタイムのプロだが、各地域の予選の段階では、アマチュアのプレーヤーが、たくさん含まれている。
 野球の方は、どうだろうか?
 日本はプロ野球が中心である。アジアでは韓国、台湾にもプロができている。欧州では野球はほとんど普及していないが、クラブ組織のチームがあり、プレーヤーの主力はセミプロだと聞いたことがある。そうだとすると、米国とアジアについては「プロ野球」の大会で、他の地域については必ずしもフルタイムのプロではない、ということになる。
 これは、一人ひとりのプレーヤーが、野球で生活を立てているかどうかよりも大会の主催者、あるいはチームの派遣者の問題だろうと思う。
 来年3月に米国で開かれる第1回のWBCの主催者は米国のメジャーリーグ野球機構である。つまり一つの国のプロ野球組織が主催する大会である。
 これに対して、サッカーのワールドカップはFIFA(国際サッカー連盟)の主催である。つまり世界を統括する国際組織の主催である。
 チームを送り出す主体は、日本の場合は日本プロ野球組織(NPB)である。社会人野球や高校野球を含めて一本化された組織はないので、日本の野球全体を代表するチームではなく、プロ野球だけの代表チームを編成することになる。
 サッカーの場合は、日本だけでなく世界のどの国でも、プロ、アマを含めて一国を代表するチームを編成できる。名実ともに「国別対抗戦」である。
 結局、野球とサッカーの国際的な組織と考え方の違いが、今回の大会にも出ているようだ。
 どっちがうまくいくだろうか? そこんところに関心を持って見守っている。


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