朝日新聞の連載「サッカー日本代表の源流」を読んで、いろいろ考えるところがあった。8月15日付けから19日付けまでの夕刊(東京版)に載った5回。いい企画記事だった。
現在の日本代表選手が、どのようにして登場してきたかを、代表的な例をあげながら追っている。
第1回は中澤佑二。高校を出てからブラジルに行き「無名選手」からはい上がってJリーグ入りを果たした。
第2回は「ユース育ち」の大黒将志。中学生のときからガンバ大阪に所属している。ガンバは宮本恒靖、稲本潤一も生んでいる。
第3回は「ブラジルから」来た三都主アレサンドロ。既成選手移入ではない。高校チームが招いて日本で育てた。
ここまでに取リ上げられたのは、協会の強化策が生み出した選手ではない。中澤と三都主には熱心な高校の指導者がかかわっている。大黒や稲本を育てたのは「クラブ」である。
第4回では、協会の強化策を扱っている。ナショナルトレーニングセンター制度による「地域選抜組」で認められた選手である。愛媛の福西崇史、兵庫の加地亮が例になっている。ただし地域選抜は才能を拾いあげ、刺激を与える場になったが、育てたのは高校の指導者だった。
最終回は「王国・静岡」の例である。静岡県は1960年代ころから組織的な育成を推進し「サッカー王国」を築き上げた。川口能活、高原直泰、小野伸二、田中誠を送り出している。小学校、中学、高校の指導者たちが協力して、学校スポーツを英才教育に結びつけた。
読み終わって考えた。
代表選手の育成の場は、学校からクラブヘと移ってきている。しかし、その過渡期にも地方で学校の指導者がしっかり貢献している。「クラブへの移行が学校を踏み付けにしなくてよかった」ということもできる。競技の普及とエリート育成を両立させ結びつけていくために、将来も学校のサッカーとの関係をだいじに考える必要があるだろう。
もう一つ。代表選手への道が、いろいろあるのがいい。連載のなかでも指摘されているが、統一された指導は「紋切り型の選手」を増やす危険もある。
ところで…。
日本サッカー協会は、福島のJヴィレッジを拠点に、全国から将来性のありそうな素材を選んで、中学生の年代から中央集中のエリート教育をはじめようとしている。これが、うまくいくかどうか。
連載を担当した中小路徹記者は慎重にこう書いている。
「結果は10年後に出る」
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