「ジーコのチーム作りは単なる偶然や思い付きじゃないよ。ちゃんと課題を見据えているよ」
そう思ったのは、ワールドカップ予選の最終戦(8月17日)でイランに2対1で勝ったあとの記者会見のときである。
その前に韓国で開かれた東アジア選手権の第2戦で、ジーコ監督は日本代表チームの先発メンバーを総入れ替えした。日本でテレビを見ていたぼくは「おもしろい」と評価したのだが、現地で取材した記者には「乱暴な思い付き」という印象を与えたようだ。先週号で後藤健生さんがそう書いている。ただし後藤さんも「ジーコという人物の勘がけっこう当たるのも事実」と評価はしている。
イラン戦のあとの記者会見の印象は違う。監督として、あと10カ月の課題とその解決策に触れたが、それを聞いているかぎりでは、問題をしっかり見据えて、計画的に、かつ現実的に準備をしようとしているように思えた。その過程で「思い付き」は「偶然に」ひらめくものだろう。
ジーコの発言から、本番への課題の主なものをまとめると次のようになる。
第一は「個人の状態をよくすること」である。これは体力作りが主になるだろう。ドイツでのワールドカップのときにトップ・コンディションになるように仕上げなくてはならない。その間、Jリーグの試合が続くので、国内組については「各クラブのフィジカル・コーチと十分に連絡をとって進めたい」とジーコは考えている。
第二は「欧州組を溶け込ませること」である。中田英寿や中村俊輔など欧州でプレーしている選手たちは大柄で力強い相手と戦うことに慣れている。その点でワールドカップでは頼りになる。しかし各国のいろいろなクラブで働いているから、コンビネーションを取り戻すのが難しい。国内組との連携を作るのにも時間が必要だろう。それに所属クラブに対して「ケガさせないように、だいじに使ってくれ」と頼むのは無理な相談である。ジーコは「試合のときだけでも、できるだけ呼び戻したい」と希望している。
最後に「登録の23人を選ぶこと」である。欧州組、これまでの国内組、最近台頭してきた若手、この3グループのなかから「情にほだされないように、クールに選ぶ」とジーコは話した。
クラブとの関係、欧州への呼び戻し、メンバー選びの難しさなどは、ジーコの母国のブラジルが毎度、さんざん悩んできた問題である。というわけで、ブラジルの大スターだったジーコが、このような課題を、ちゃんと考えているのには、何のふしぎもない。
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