日本代表チームにとって、第2回東アジア選手権での一つの収穫は男子のジーコ監督の大胆な用兵だろう。第2戦(8月3日・大田/テジョン)で先発を総入れ替えし、それまでの控えメンバーを並べた。その結果、代表初出場の田中達也、今野泰幸などが脚光をあびた。これは成果だった。
友人がいう。
「3年前に、アテネからドイツヘスローガンを掲げた人もいたじゃないか。オリンピックのときに若手の才能は分かっていたはずだ。ジーコはもっと早くから彼らを使うべきだったんだ」
これは難しい問題である。
ジーコ監督のこれまでの仕事は、ワールドカップ・アジア予選を勝ち抜いてドイツ行きの切符を確保することだった。そのためには、実力が安定していて評価の確実なメンバーを選ばなければならなかった。だから欧州に行っているスター選手を呼び戻すのにこだわった。いわば「安全な用兵」である。
今回、韓国で開かれた東アジア選手権は事情が違う。ワールドカップ決勝大会の出場権はすでに手にしている。ジーコ監督にとっての次の目標は、来年のドイツで、まず1勝をあげることである。そのためには、いまこそ新戦力に国際試合の経験を与え、実力をためすチャンスである。だから「意外な用兵」も可能だった。
「代表チームの部屋には二つのドアがある。一つは古い人が出ていくドアであり、一つは新しい人が入ってくるドアである」
この「ことば」は、1960年代に日本のサッカーを改革した恩人、デトマール・クラマーさんの口ぐせだった。とはいえ、大事な試合を戦っているさいちゅうにドアを大きく開けておくことはむずかしい。だからワールドカップ予選のときは、ジーコはドアを少ししか開けておかなかった。
今回は、欧州組を呼ばないで、ドアを少し大きく開けた。ところが第1戦で北朝鮮に0−1で敗れたので、思い切ってドアを大きく開け放ったわけである。
新陣容で中国と2−2の引き分け、地元韓国に1−0で勝ち。試合の内容はともかく結果は「まずまずだった」とはいえるだろう。
しかし、部屋の定員は限られている。出ていった人が再び入ってくることもある。だから、来年のドイツがどんな顔触れになるかは、まだまだ分からない。
ぼくの予測では、出ていく可能性の高い人は、欧州組のベテランではなくて、政治の世界のことばでいえば、小泉首相が言った「中二階組」ではないか。
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