野球についての二つのニュースをきいてサッカーの歴史を思い出した。オリンピックとワールドカップに関係する話である。
シンガポールで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2012年のオリンピック開催地がロンドンに決まった。そして、そのロンドン大会の開催競技から野球が除外された。
その翌日に米大リーグ野球機構(MLB)がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開催計画を発表した。世界各地区から16チームを招待して国別対抗戦を開く。将来はサッカーのワールドカップにあたるものに育てようという構想である。
二つのニュースが相次いだのは偶然だが、話としては関連がある。それでサッカーの歴史を思い出したのである。
サッカーもオリンピックから除外されたことがある。1932年ロサンゼルス大会である。除外の大きな理由は、当時のオリンピックの理念だったアマチュアリズムが国際サッカー連盟(FIFA)の考え方と合わないことだった。
欧州のサッカーには「純粋でないアマチュア」がかなりいた。別の仕事を持っていて、サッカーの試合に出たときには失った賃金の補償(ブロークン・タイム・ペイメント)をクラブからもらう。そういうプレーヤーである。
アマチュアリズムは「スポーツによってお金をもらってはいけない」という考え方である。だからIOCは「純粋のアマチュアでなければオリンピック出場資格を与えない」と主張した。FIFAは「プロもアマチュアも差別しない」のがもともとの理念である。その対立のためにサッカーが除外された。
その2年前に、FIFAはワールドカップを始めていた。これは「プロもアマも」参加できる世界選手権である。この理念によって、ワールドカップはオリンピック以上に大衆に支持される大会に成長した。
今回、野球がオリンピックから除外された原因の一つは、米国がプロのトップクラスである大リーガーを、前回のアテネ・オリンピックに出場させなかったことである。70年以上前のサッカー除外の事情とは正反対である。オリンピックの理念は180度変わった。
ところで大リーグ主催の「ワールド・ベースボール・クラシック」は、サッカーのワールドカップのように成功するだろうか?
将来を見守りたいと思うが、今のところは難しいようにみえる。というのは、野球とサッカーでは、考え方も組織も、かなり違うからである。 |