ハンガリー代表チームが1950年代の前半に連戦連勝、「マジック・マジャール」と呼ばれたことは伝説になっている。最近、日本で公開されたドイツ映画『ベルンの奇跡』は、そのハンガリーに西ドイツが土をつけた1954年ワールドカップを背景にしている。
この映画のプログラム(冊子)に後藤健生さんが解説を書いていて、そのなかに当時、ハンガリーは4年間無敗、22勝4引き分けを続けていたとある。
ぼくが読売・日本テレビ文化センター北千住で開いている「ビバ!サッカー講座」で、そのことを紹介したら、次の回にドイツに詳しい仲間が「別の資料で調べたら、いろいろな数字がありますよ」と教えてくれた。
当時の西ドイツの監督だったヘルベルガーの本によるとハンガリーは31試合無敗、主将だったフリッツ・ワルターの本によると33試合無敗、ドイツの新聞「キッカー」では32試合無敗となっているという。
映画館で買った冊子の数字は、スイスのワールドカップ開幕前までのものである。大会でハンガリーは4試合に勝っているから、これを加えると決勝戦で西ドイツに敗れるまで30試合無敗を続けていたことになる。つまり、これだけで4種類の数字が出てきたことになる。
こういうことは、サッカーマガジン編集部の記録博士、国吉好弘さんに聞くのが間違いない。と思って電話を掛けたら「インターネット上に代表チームの記録を集めたサイトがありますよ」と2種類教えてくれた。
ところが、これも数字が違う。一つは32試合無敗、もうひとつは31試合無敗である。この1試合の違いは、1952年5月18日の東ドイツとの対戦を勘定に入れるかどうかによるらしい。ハンガリーが5−0で勝っているが、非公式の親善試合でFIFAには届けられていない。
いずれも引き分けは4となっているから、引き分け試合については間違いはないようだ。
こういう違いをみて、ぼく自身はむかし、どう書いただろうかと、いささか不安になってきた。
1974年のワールドカップのあとに出した『サッカー世界のプレー、西ドイツ大会』(講談社)のなかに、ワールドカップの歴史を書いた覚えがあったので引っ張り出してみた。それには「4引き分けをはさむ21連勝」と書いてある。スイス大会にはいってからの4勝を加えると29試合連続無敗になる。
コンピューターも、インターネットもなかった30年前に、この数字をどこから引用したのか、まったく覚えていない。
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