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サッカーマガジン 2005年4月26日号
ビバ!サッカー

欧州組主軸はW杯本番対策?

 ワールドカップ・アジア最終予選の話の続きである。
 前号に、日本代表のジーコ監督が、イラン戦とバーレーン戦とでシステム(基本の布陣)を変えた話を書いた。二つのシステムが、俊輔とヒデを両立させるために、どう機能したかという話である。
  これに対して、つむじまがりの友人が反論してきた。「なぜ俊輔とヒデにこだわるんだ。ほかにも、いいプレーヤーがいるだろう」。
 たとえばだ…。
 ジーコ監督はイラン戦で4バックにした理由として田中誠が出場停止だったことをあげた。でも「田中誠の代わりを国内組から、ほかのプレーヤーを起用すればいいじゃないか」。
 ごもっとも…。 
 だが、ジーコ監督はこの機会に俊輔とヒデを両立させる方策を探りたかったのではないか。 
 なぜか…。 
 予選で勝ってドイツのワールドカップ決勝大会に進出したとき、俊輔とヒデが2人とも必要だからである。 
 客観的にみれば、日本は本番で優勝を争うほどの力はない。しかし、だからこそ、本番の1次リーグでは優勝候補のチームに一泡吹かせたい。相手はドイツでも、フランスでも、アルゼンチンでも、ブラジルでもいい。こういう相手から勝ち点をあげれば、日本のサッカーのレベルも、ジーコの監督としての力量も、高く評価されることになるだろう。 
 本番で欧州や南米の強豪に一泡吹かせるためには、高いレベルのサッカーを経験しているプレーヤーが欠かせない。だから欧州でプレーしている中村俊輔や中田英寿が必要なのである。 
 イラン戦とバーレーン戦は、俊輔とヒデ両立の方式を探る絶好の機会だった。なぜなら、2人をともに欧州から呼び戻して使うことができたからである。 
 ただし、2人の組合せを練習で確認する時間はなかった。そのために、予選のぶっつけ本番でためしたわけである。 
 「ドイツで2人が必要だとしてもだよ。予選でためして失敗して、本番に出られなかったら意味ないじゃないか」 
 もっともな意見である。 
 だが…。
 ブラジルではワールドカップで優勝しなければ国民は納得しない。負けるのであれば、1次リーグで敗退しようが準々決勝で敗れようが同じである。 
 ブラジル人のジーコ監督にとってアジア予選に勝つことは目標ではない。本番で勝つことを視野に入れている。そうであれば次につながらないチーム作りは無意味だと考えたのではないだろうか。


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