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サッカーマガジン 2005年4月19日号
ビバ!サッカー

俊輔とヒデの両立システム

 ワールドカップのアジア最終予選の前半ラウンドで、日本はイランに敗れバーレーンに勝った。イランとの試合では4バックの守り、バーレーンとの試合ではいわゆる3−5−2のスリーバックだった。というわけで、またもやシステム論議が盛んである。
 このところ使い慣れていた3−5−2のシステムを、なぜ3月25日のイラン戦では使わなかったのか?
 ジーコ監督の答えは「テヘランでは田中誠が出場停止だったから」である。手慣れたシステムのなかで重要な役割を果たしてきた守りのプレーヤーを欠くのだから、別の方式を試みるのも一つの手である。
 テヘランに行った新聞記者たちの間では「俊輔とヒデをいっしょに使うために4バックにしたのではないか」という推測が多かった。これも納得できる考え方である。
 中村俊輔も中田英寿も、前の方で攻撃を組み立てるのが得意なプレーヤーである。この2人を中盤の前の方で並べて使うと守りの人数が足りなくなる。そこで4バックにして、中盤の底のボランチ2人とともに守りを固める。
 そうするとウイング・プレーヤーがいなくなるが、テヘランでは、このポジションの三都主も出場停止だった。だからサイドからの攻撃は、4バックの両端のプレーヤーの攻め上がりを待つことになった。
 結果的には、俊輔とヒデを並べて使うシステムは、予想ほどには機能しなかった。相手が左側の俊輔をきびしくマークしたこともあって攻めのパスは右側のヒデ経由に偏った。また俊輔が右、左に動いて展開しようとしても、隣にヒデがいるので、そう奔放には動けなかった。
 3月30日、埼玉スタジアムのバーレーン戦では、いわゆる3−5−2だった。田中誠と三都主が戻ってきたから、これもうなずける。
 中盤の前方は俊輔だけにして、ヒデをボランチの位置に下げた。両雄を縦に配置したわけである。
 俊輔は前方で奔放に左右に動くことができた。ヒデは下がりめにいるから、それほど厳しくはマークされない。比較的らくにボールを受けられるし、前方のスペースに進出することもできる。こちらのほうは、うまく機能した。
 こういうふうに論じると、両雄の横並びよりも縦並びがいいように思えるが、埼玉で縦並びが使えたのは、ボランチの小野伸二がテヘランで2枚目の警告を受け埼玉では出場停止になっていたからである。「禍福はあざなえる縄のごとし」だと思う。


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