前号に続いて「日本サッカー殿堂」の話を取り上げる。
新たに開設される「サッカー殿堂」に日本サッカー協会の歴代の会長は原則として全員掲額されることになった。
「なぜ?」と、つむじまがりの友人が異議をとなえる。「大きな仕事をした会長もいれば、単なる飾りだった会長もいるんじゃないの?」
戦前の2人の会長は協会創設と草創期にお偉方として力を貸してくれた人だから、それだけでも歴史に留める価値がある。戦後の7人については、ぼくも直接知っている。いずれも、日本のサッカーの歴史に業績を書き残すことができる。
というわけで、今回掲額される9人について問題はないと思うが、お膳立てをした殿堂委員会では議論があった。
「参考までに」ということで、協会から最初に出てきた原案には「候補者名簿作成参考リスト(役員)」として、歴代の名誉総裁、会長、主要理事の名前が並んでいた。
これについて「名誉総裁だった高円宮憲仁親王を協会が選考の対象にするのは恐れ多いではないか」という声が出た。協会からお願いして名誉総裁になっていただいた方を、協会が表彰するのは、たしかに適当ではない。
歴代会長については、別の問題があった。
「スポーツの殿堂」は、ほかの国にも例があるが、ぼくの知るかぎり、博物館など民間の団体が主になって顕彰している。競技団体自身が主催者である例は、多くはないだろう。
しかし、今度の「日本サッカー殿堂」の主催者は日本サッカー協会である。掲額する「日本サッカー・ミュージアム」も協会内の組織である。
そうすると日本の場合は、協会の責任者が自分たち自身を選考して表彰することになる。「これも変じゃないか」という意見が出た。
しかし、日本サッカー協会の施設に、歴代の会長の肖像を掲げるのは、おかしくない。
というわけで、歴代の会長は、選考の対象にしないで掲額することになった。また「表彰」ということばは使わないで「掲額」とすることにした。
これに対しても意見はあるだろう。
歴代の会長のなかには、競技者(プレーヤー)として投票で選ぶことのできる人もいる。あるいは過去の協会役員は無給のボランティアだったが、今後は有給の専門家が責任ある仕事をする例が多くなるだろう。こういうのを同じように扱っていいのかという議論もある。なかなか、難しいものである。 |