神戸で行なわれた視覚障害者サッカーの日本選手権を見に行った。1月22日と23日の2日間、会場は神戸ウイング・スタジアムのフットサル・コートである。
初日の試合後に、スタジアム内の研修室で、わが「ビバ!サッカー研究会」主催の講演会をした。この研究会は、東京の文化センターでぼくがやっている講座仲間の集まりである。講座のなかで目の不自由な人のサッカーの話を聞いて感動し、何かお役に立てないかと、勝手に企画して押し掛けたのだが、日本視覚障害者サッカー協会が快く受け入れてくださった。兵庫県サッカー協会会長の村田忠男さんも来てくださったので、ご挨拶をお願いした。なごやかな、実りある集まりになった。
試合と講演会を通じて、いろいろなことを学んだが、その中で「これは、なんとかしたい」と思ったことがある。それは障害者教育の関係者の間に「目の不目由な人たちにとってサッカーは危ないスポーツだ」という考えがあるという話である。テニスやバレーボールのように敵味方が分かれてやるスポーツならともかく、サッカーは入り乱れてぶつかりあうから危険だと考えるのだろう。
しかし、実際に試合を見てみれば、これは見当違いであることがわかる。
フットサルと同じ広さのコートは、プレーヤーにとって、むしろ自由で安全な空間である。タッチライン側にはフェンスが設けられてボールや人間が飛び出さないようにしてある。ゴールキーパーは目の見える人で守る味方に声で指示を出す。ゴール裏には「コーラー」というこれも目の見える人がいて攻めている味方に声で指示する。フィールドプレーヤーは、ボールを奪いにいくとき「ボイ」と声をかけて相手に教える。「ボイ」とはスペイン語で「行くぞ」という意味である。必要があれば審判も指示をする。そのうえで接触があってもしょせんは人と人とのぶつかりである。道具を使うスポーツのような力は働かない。
こういういろいろな仕組みがあって、プレーヤーはコート内の状況をちゃんとイメージしている。コート内をのびのびと自由に走ってプレーしている。実にすばらしい。
ゴールキーパーやコーラーが健常者であるのもいい。コーラーは単なる介助者ではなく、ともにプレーをする仲間である。日本選手権の参加チームでは、コーラーは多くが若い女性だった。介助者として奉仕活動をしているだけではなく、チームメートとして楽しんでいる。
視覚障害者のための学校や施設にサッカーのよさを認識してもらう活動を手助けできないものかと考えている。
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