2004年12月に大きな試合が2日続けてPK戦になった。一つは12月11日、埼玉スタジアムのJリーグ・チャンピオンシップ、次は12日、横浜国際スタジアムのトヨタカップである。
PK戦については、ぼくの仲間たちの間では評価が分かれている。
「PK戦で優勝はおもしろくないな。再試合をやるべきだよ」というのは年配の仲間である。むかしはワールドカップだって再試合制だった。1978年のアルゼンチン大会のときは、決勝が再試合になりそうな雲行きで、帰国の飛行機の切符がパーになるんじゃないかと心配した、なんて思い出話をする。
「PK戦は最高に盛り上がるね。やっぱり勝負は決着をつけなきゃね」というのは比較的若手の仲間だ。Jリーグ・チャンピオンシップについていえば、横浜F・マリノスのサポーターも、浦和レッズのサポーターも、とにかく優勝トロフィーを持って帰ってほしいと燃えていた。
ぼくが思うに、現在では再試合は無理である。なぜなら試合はテレビのために行なわれているからである。
むかしは試合の主な収入は入場料だった。チームのギャラも、運営の経費も切符の売り上げから出た。だから決勝戦が再試合になって盛り上がり、お客さんが詰め掛ければ、所得も倍増するので心配はなかった。
ところが、いまは試合の最大の収入源は入場料ではなくて、テレビの放送権料である。再試合になると、テレビの放映枠を新たにとらなくてはならない。多チャンネル時代になっているから、放送時間はなんとかなるかもしれないが、スポンサーが、2試合分のお金を出してくれるとは思われない。チームのギャラと運営経費は2倍になっても、収入は倍にならない。ここはPK戦で、さっさとケリをつけて、スポンサーの会社の社長さんが優勝チームにカップを渡す場面をカメラの前で演出する必要がある。
ぼくの個人的な好みは、再試合でもPK戦でもなく「優勝預かり」である。たしか、むかしは大相撲では勝ち星同じときは「優勝預かり」だったような気がする。「双方優勝」とする手もあるが、勝負がついていないのに「優勝」はおかしい。ただし「預かり」では、スポンサーの会社の社長さんに出番がなくなるのが難である。
暮れの2つの引き分けの試合内容はよかった。試合が良ければ、カップは預かりでも満足できる。ただ、Jリーグ・チャンピオンシップも、トヨタカップも「今回が最後」ということだから、今回はどちらかのチームに、トロフィーを預ける必要があったかもしれない。
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