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サッカーマガジン 2004年11月16日号
ビバ!サッカー

ジーコ提案への賛否を考える

 「ジーコ提案をどう思うかね」と友人に聞かれた。「うーむ。気分としては反対だな」と、ぼくは答えた。
 ワールドカップのアジア1次予選の最終戦に「日本代表として大きな功績を残しているベテランを起用しよう」という案である。ゴンとか、カズとか、秋田とか、Jリーグの現役ではあるが最近は代表の試合に出番がない選手を集めて、はなやかに栄誉を讃えようというアイデアだ。
 10月13日にアウェーのオマーン戦に勝ったあと、ジーコ監督が「おもしろい考えがある」と語った。そのときは具体的には話さなかったのだが、その後に日本サッカー協会の川淵三郎会長が内容を披露した。そうしたら賛否両論が巻き起こった。
 この案を聞いたときの、ぼくの最初の反応は「反対」である。理詰めに考えた結果ではない。だから「気分としては」である。
 ワールドカップ予選は格式のある国際公式戦だ。相手チームのシンガポールに対する礼儀からも正装して試合をするべきである。国内の事情だけで「はっぴ」に鉢巻きの「お祭り」にするのはよろしくない。長年にわたってワールドカップの価値を日本で知ってもらおうと努力してきた老記者としては、予選といえどもワールドカップを軽く扱ってもらいたくない。そういう気分である。
 とはいえ「新しい提案が出たときに短絡的に反応しないように」と、ぼくは心がけている。だから、友人から質問されて改めて考え直してみた。
 ワールドカップ・アジア1次予選の最終戦は、11月17日に埼玉スタジアムで行なわれる。日本の次のラウンドヘの進出はすでに決まっていて、勝っても負けても関係のない、いわゆる「お花見試合」である。そういう試合をホームの4万人収容のスタジアムでやるのだから、お客さんに来てもらうだけの魅力を作る必要がある。ベテランのスーパースターの功績を讃える試合にするのも、一つの手かもしれない。
 欧州でプロ生命をかけて戦っている選手を「お花見試合」に呼び戻すのは現実的でない。その部分は他の選手で埋めなければならない。
 そこで「将来のために若い選手に国際試合の経験を積ませる場にすべきだ」という考えもある。これも一理ある。しかし相手チームに対する礼儀という点からみれば、向こうにも名の知れているベテランのスターたちを起用するほうが適当かもしれない。
 というわけで、ぼくの心の中でも賛否両論が渦巻いたわけである。


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