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サッカーマガジン 2004年10月26日号
ビバ!サッカー

テレビ放送権は誰のものか

 プロ野球再編成騒動はスポーツの組織についてのいろいろな問題を洗い出して興味深かった。その中の一つで注目したいのはテレビ放送権の問題である。
 オリックス・ブルーウェーブが近鉄バッファロ−ズを吸収合併して、パ・リーグの球団数が6から5に減った。奇数では試合をするのに半端だというので、すったもんだの末に新規参入を認めることになり、手を挙げた2つの会社のうちの1つを選ぶことになった。加盟申請をしたのは「ライブドア」と「楽天」だ。どちらもインターネットを利用したベンチュア・ビジネスの会社である。
 新興のIT企業がプロ野球に興味を持ったのはなぜか。
 重要な要素は、おそらく試合のテレビ放送権である。それも現在の地上波と衛星波の電波による中継ではなく、インターネットによる放映の将来性だろう。
 いま、日本の多くの家庭では、インタ−ネットを電話回線で利用している。ふつうの電話回線だと容量が小さいから動く映像は、うまく扱えない。しかし、近い将来に、光ファイバーのブロードバンド回線が各家庭まで張りめぐらされるようになる。そうなったらテレビはネットを通じて見るようになるのではないか。
 すでにネット放映をしている球団もあるが、容量の大きい回線を使っている受信者が少ないから、いまのところはビジネスとしては成り立たない。だが、これから、あっという間にネットテレビが普及する可能性はある。プロ野球に目を付けたIT企業のねらいは、これだろう。
 ところで、こういうねらいが成り立つのは、プロ野球では試合のテレビ放送権が球団のものだからである。たとえば、阪神タイガースは甲子園での試合のテレビ放送権を自分で売ることができる。テレビ局に中継をさせて収入を得ている。
 ネットテレビの時代が来れば、試合の映像をネットで流して収入を得られることになる。試合ごとの有料放送が成り立つようなら「映像による入場料収入」のようになる。サポーターは、地元での試合の映像は地元球団からの映像で、遠いアウェーの試合は相手球団からの映像で楽しむことができる。
 Jリーグでは、そうではない。放送権はリーグが一括管理している。放送権収入はリーグに入って、その中から各クラブに分配される。
 この方法だと、力の弱いクラブを助けることができる。しかし、各クラブが自主的に努力する意欲を妨げる。また競争心を失わせる。
 ぼくは、リーグの試合のテレビ放送権は、入場料と同じように、本来ホームゲームのクラブのものだと考えている。


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