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サッカーマガジン 2004年10月12日号
ビバ!サッカー

ベガルタ仙台!がんばって!

 今回は前週の続きである。
 ヴィッセル神戸を引き受けた「楽天」の三木谷浩史社長が、プロ野球にも乗り出すというから「同じオーナーがプロ野球とJリーグのチームを同時に神戸で経営するのはおもしろい」と前週に書いたが、そうは問屋がおろさなかった。楽天の新球団は一転、仙台を本拠地にプロ野球加盟を申請した。世の中ころころ変わるから、なかなかついていけないね。
 同じIT企業のライブドアも、プロ野球新球団の本拠地を仙台に置く計画で加盟申請を出している。この記事を書いている時点では、どちらが加盟できるかは分からない。あるいは、どちらも認められないかもしれない。
 が、ともあれ、対岸の火事は、神戸でなくベガルタ仙台に飛び火したようだ。「仙台でプロ野球とJリーグが両立できるかな」と心配になってきた。
 神戸はサッカーで古い伝統のある都市である。明治時代に神戸外人クラブを通じて日本にサッカーが入ってきたという歴史がある。いまの高校サッカーの前身である中等学校大会は、この地域で始まり神戸一中や御影師範が活躍した。その後、現在に至るまでレベルの高いサッカーを維持し続けている。
 野球も兵庫県では伝統のあるスポーツである。高校野球とタイガースの甲子園球場の所在地は兵庫県である。阪神のほかに、かつては阪急、いまはオリックスが兵庫県に本拠球場を置いている。
 そういう土地柄だから「神戸だったらプロ野球とサッカー両立の実験に最適だのに…」と思ったのだが、仙台ではどうか。
 もちろん、仙台だって大都市だし、野球にも、サッカーにも、それぞれ伝統があるだろう。しかし、ベガルタ仙台はJリーグ発足後に新しく誕生した歴史の浅いクラブである。地域に根をおろしたチームをめざしてはいるが、まだ根はついたばかりで、深く広く地中に張りめぐらされているわけではない。何十億の資金を投じて新球団の地盤を一気に掘り起こそうとする新興のIT企業に、ひっくり返されてしまうのではないか。ちょっと危険な実験になるのではないか、という気もする。
 「ベガルタ仙台とも協力して…」とプロ野球参入をめざすオーナーは言っているようだ。それが、うまくいって欲しいと思う。
 若い起業家が、新しい柔軟な考え方で新球団を経営してくれれば、スポーツに新しい風を吹き込むことになるだろう。Jリーグにもいい刺激になるだろう。
 でも、ベガルタ仙台。根付きかけた若木を守って、がんばって!


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