「おもしろかった」と言えば語弊があるかもしれない。でも、いろいろ興味深かった。9月8日夜に行なわれたワールドカップ・アジア地域予選、インド対日本の試合の話である。
前半終了間ぎわに日本がやっと1点をとってハーフタイム。ちょっと席を離れてテレビの前に戻ったら、コルカタ(カルカッタ)のソルトレーク・スタジアムは停電で薄暗かった。それから延々、正規のハーフタイムを含めて45分間。照明がつきかけたり、また消えたりした。
薄暗がりのなかで解説の金田喜稔さんが生中継をなんとかつなごうと「いままでに、こういうことがあったかなと思い出そうとしてるんですが…」と話した。実はぼくも同じことを考えていた。
かつて新聞社のスポーツ記者だったころ、スポーツの珍談が好きだった。野球でホームランを打ちながら前の走者を追い越してフイにしたとか、サッカーでコーナーキックを蹴ろうとしたらスタンドから子犬が走り出て蹴ったとか、そんなたぐいの話である。そういう場面に出くわしたら、必ず記事にして送稿したものだが、たいていボツになった。それを集めて少年雑誌の各ページの欄外に「スポーツの珍記録100」というようなタイトルで載せてもらったこともある。
「プロ野球では停電中断の試合を取材した覚えがあるな」と思い出したが、サッカーのほうは、思い出せないでいるうちに、なんとか試合再開になった。
試合はインドでやっているのだが、テレビ中継は日本向けだけなのだろうか。ベンチのジーコ監督やスタンドの日本のサポーターがよくうつる。競技場内の看板広告はほとんど日本ものである。「読売新聞」と漢字の広告がある。インドで日本語の新聞を売っても仕方ないだろうに。「東京メトロ」の広告もあった。コルカタの人が東京の地下鉄に乗るわけないだろ。
こういう話も「珍談」として活字に残しておきたいのが、ぼくの「こだわり」である。こういう事実が時代の社会や経済の姿を示している、と言ったら大げさ過ぎるだろうか。
試合のほうはどうだったか。
暑さのせいか日本の選手の動きはよくなかった。パスも、なかなか、かみあわなかった。でも、なが〜いハーフタイム後は息が合うようになり、相手はリズムを崩した。得点はみな、いい形だった。4−0の結果はよかった。
サッカー試合停電中断の過去の記録はスポーツ新聞がちゃんと翌朝の紙面に載せていた。デジタル時代だから印刷された記録を克明に調べなくてもインターネットで簡単に分かるのかもしれない。
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