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サッカーマガジン 2004年9月7日号
ビバ!サッカー

アテネの女子に光を見た

 「ひょっとしたらメダルを」と、まったく思っていなかったと言ったらウソになる。でも、ほんとのところ、アテネ・オリンピックの日本代表に、それほど大きな期待を持ってはいなかった。成績は予想の範囲内である。しかし女子については「未来があるな」と明るい感じがした。これは思いのほかだった。
 世界のいろいろな地域のチームの力は接近していて楽に戦える相手はない。ただ、チームとしてのまとまりは、オリンピックに関しては、日本は上のほうだろう。テレビで見ていてそう思った。 
 速さと力強さと体格では他の国がまさっている。こういう相手に対抗するには、日本は組織力を武器にするほかはない。アテネ大会に出場した日本代表は、男女とも、そういう方針でチームをまとめていた。それはいい。 
 ただ、男子の山本監督と女子の上田監督ではチーム作りの考え方に、かなり違いがあるように思った。男子は監督の考えで選手が動かされているという印象である。それが結果としては裏目に出た。
 女子の日本代表チームは、のびのびとまとまっていた。一人一人の良さを生かしながらチームになっていた。 
 体力的にはもちろん、テクニックについても、戦術能力についても、男子に比べれば見劣りする。でも、それぞれが自分の得意なこと、好きなことを、どんどん発揮しようとしている。ドリブルの好きな選手が多いようでチャンスになれば、どんどんドリブルする。中盤の守備も、やらされているふうでなく、自分から喜んでプレスをかけにいく感じである。一生懸命にサッカーをする楽しさが見えて気持ちがいい。こうふうであれば、選手も、チームもまだまだ伸びていくだろうと思った。 
 オリンピックの前に大住良之さんと大原智子さんが新しく書いた『がんばれ!女子サッカー』(岩波アクティブ新書)という本を送っていただいた。女子サッカーについて、まとめて書いたものは、あまりない。これは貴重な著作である。 
 この本によると、日本でも世界でも女子サッカーは、まだ発展途上のようだ。しかし、未熟であるからこそ、改善の余地が大きく、未来が楽しみだということもできる。 
 日本の女子サッカーについていえば、小、中字生の年齢の段階で、サッカーを楽しめる環境を広げてやることが第一だと思った。オリンピックでメダルをとるために、あくせくするよりも、まず女の子たちに「サッカーは楽しいな」と思ってもらうことである。そのために、アテネに参加した代表チームは、いいお手本であり、刺激だった。


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