アジアカップ準決勝の中国対イランをテレビで見ながら「うーん、これは中国が勝ったほうがいいな」と考えた。8月3日の深夜である。
NHKテレビのBS7が、済南で行なわれた日本対バーレーンの大激闘の中継のあと引き続いて北京の試合を放映した。
日本の決勝進出はすでに決まっている。
決勝の相手は中国かイランか? それを気にしながら深夜のテレビを見ていた。
「どっちが相手であっても、日本は苦しい」とは、その時点で思っていた。
日本とバーレーンの試合は、双方とも疲れ切っていて、よれよれになりながら戦っていた。決勝戦を戦うだけの余力が残るかどうかと心配だった。
一方の中国対イランの試合は、どちらも元気そうである。とくに北京に居座って戦ってきた中国は、テレビの画面で見るかぎり、まだまだ余力がありそうだった。それに応援の問題もある。地元有利は常識である。
にもかかわらず――。
「決勝戦の相手は中国のほうがいい」と考えたのは、サッカーのスタイルを考えたからである。
テレビの画面で見るかぎり、中国はパスをつないで組み立てる組織のサッカーのようだった。組織力の勝負だったら、いまの日本のサッカーは負けない。中国の組織力による攻めに日本の守りの組織が振り回されることはないだろう。一方で一人ひとりの判断力と技術を生かした攻めの組み立ては日本のほうが上だろう。
イランには、速い足技による突破力を持った攻め手が3人はいるようだった。
個人の力では日本を上回っている。疲れ果てている日本が、個人の勝負に持ち込まれれば、防ぎ切るのは難しい。
こんなことを考えながら中継を見ていたら、中国対イランはPK戦にもつれこんだすえに中国が決勝に進出した。でも客観的に見れば、体力に余力のある地元中国が有利と見るのが常識だろう。
もともと、ぼくは今回のアジアカップの結果に、あまり期待していなかった。ジーコ監督としては、アジアカップよりワールドカップ予選が重要だろう。一般の国民にとっては、アテネのオリンピックのほうに関心があるだろう。アジアカップは1次リーグを突破すればいい。一発勝負の決勝トーナメントは、実力が接近していれば運の要素が大きいのだからベスト8だろうが、ベスト4だろうが気にすることはない。そう思っていた。
しかし、俊輔、川口、中澤、玉田とつぎつぎにヒーローが現われ、運にも恵まれて勝ち進むと、やっぱり結果が気になってくる。決勝進出はすばらしいと、いまでは結果を高く評価している。
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